研究課題
ヒト生殖補助医療(ART)の普及に伴い、これまで非常に稀であったゲノムインプリンティング異常症の発症頻度の増加が世界中で報告され注目されている。本研究では、ARTによるリスク要因を検索するため、インプリント異常症患児DNAを用い、インプリント領域のメチル化解析、メチル化関連遺伝子の構造・機能解析を行い、メチル化異常の発症メカニズムとARTの影響について比較検討する。本年度は、Silver-Russell症候群(SRS)患児の末梢血DNAを用いて、Reduced Representation Bisulfite Sequence(RRBS)法によりDNAメチル化解析を行った。インプリント領域において、Bisulfite-polymorphic PCR Sequencing(BS)法と比較した結果、RRBS法はアレル特異的なメチル化解析を困難であったが、BS法よりも広い領域を解析することでき、メチル化率についても同等なものが得られ、信頼のおける実験手技であることが確認できた。次にゲノムワイドな解析を行った。SRS各検体において、8人の正常児の血液DNAのメチル化平均から2SDおよび10%メチル化が異なる領域をメチル化可変領域(Differentially Methylated Regions: DMRs)として抽出した。抽出したDMRについて、プロモーター、CpGアイランドでは高メチル化されたDMRが多かったが、SINE等の繰り返し配列では低メチル化されたDMRが多かった。次に、抽出したDMRをART群および非ART群で検討した。いずれの領域についても非ATR群に比べART群の方がメチル化変化の程度および頻度で大きかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、RRBS法によりSRS患児のインプリント領域のメチル化を解析した。従来の手法と同等の結果となり、信頼のおける実験手法を確立することができた。SRS患者では非ARTに比べ、ARTの方がメチル化変化の影響を受けていることを明らかにし、十分な成果が得られたと考えている。
今後は、Beckwith-Wiedemann症候群患児の末梢血DNAをRRBS法により、ゲノムワイドな解析を行い、 メチル化異常のパターン分類と特徴について検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 図書 (1件)
Reproductive Medicine and Biology
巻: 13 ページ: 193-202
PLOS Genetics
巻: 10 ページ: e1004868