研究課題/領域番号 |
26870033
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
樋浦 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70451523)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生殖補助医療(ART) / インプリント疾患 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
ヒト生殖補助医療(ART)の普及に伴い、これまで非常に稀であったゲノムインプリンティング異常症の発症頻度の増加が世界中で報告され注目されている。本研究では、ARTによるリスク要因を検索するため、RRBS法を用いてインプリント異常症患児のゲノムワイドなメチル化解析を行い、メチル化異常の発症メカニズムとARTの影響について比較検討する。昨年度までに、Silver-Russell症候群患児のメチル化を行い、プロモーター、CpGアイランドおよび繰り返し配列において、非ATR群に比べART群の方がメチル化変化の程度および頻度で大きいことを明らかにした。 本年度は、Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)患児9検体(ART群2、非ART群7)のメチル化解析を行った。BWS各検体において、8人の正常児の血液DNAのメチル化平均から2SDおよび10%メチル化が異なる領域をメチル化可変領域(Differentially Methylated Regions: DMRs)として抽出した。抽出したDMRについて、プロモーター、CpGアイランドでは高メチル化されたDMRが多かったが、SINE等の繰り返し配列では低メチル化されたDMRが多かった。次に、抽出したDMRをART群および非ART群で比較した。プロモーターおよびCpGアイランドではART群の方がメチル化変化の程度および頻度は多かった一方、SINEなどの繰り返し配列では非ART群の方が多かった。すべてのBWS患者におけるプロモーター領域にメチル化異常が見られた遺伝子群をGO解析した結果、生物学的接着や細胞接着など成長に関わるGO termが抽出されたが、ART群および非ART群単独ではGO termは抽出されなかった。以上の結果から、BWSのゲノムワイドなメチル化にはARTの影響は少ないと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、RRBS法によりBWS患児のゲノムワイドなメチル化解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、症例数、特にBWSのART患児を増やし、メチル化解析の信頼性を向上させ、メチル化異常領域の頻度、程度、影響を受けやすい領域を明らかにする。また、メチル化基質合成酵素遺伝子MAT2AおよびDNAメチル化酵素DNMT3A, 3Bおよび3Lの遺伝子変異およびプロモーター領域のメチル化解析を行う。
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