研究実績の概要 |
ゲノムインプリンティングは胎盤を有する哺乳類に特有な現象であり、この機構によってアレル特異的発現を示すインプリント遺伝子は胎盤形成において重要な役割を果たしていると考えられる。現在100種類以上のインプリント遺伝子が知られているが、本研究では申請者らが過去に報告した10種類の胎盤特異的インプリント遺伝子の胎盤形成における役割を解析する。本年度ではまず胎盤特異的インプリント遺伝子の発現量及びSNPを用いたアレル特異的発現パターンを解析し、10種類中8種類の遺伝子(Sfmbt2, Tfpi2, Ppp1r9a, Ascl2, Tspan32, Tssc4, Ano1, Gab1, Slc22a3) について胎盤と同様のアレル特異的発現を確認した。次にこれらの遺伝子のうちAno1, Sfmbt2, Gab1 についてアレル特異的DNAメチル化及びヒストン修飾を解析した。 バイサルファイトシーケンス解析により、TS細胞においてGab1に母由来アレルのみがメチル化されるDMR(differentially methylated region)が存在することがわかった。Ano1 及び Sfmbt2のプロモーター領域は両アレルとも低メチル化状態にあった。またChIP 解析により、Ano1はH3K4me2, H3K4me3 の母由来アレル特異的修飾が、Gab1, Sfmbt2 はH3K9me2の母由来アレル特異的修飾及び、H3K4me3 の父由来アレル特異的修飾が見られた。このことは、これらの胎盤特異的インプリント遺伝子がDNAメチル化だけでなくヒストン修飾によってアレル特異的発現がインプリントされる可能性を示唆している。
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