研究課題/領域番号 |
26870037
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 賢貞 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (20638853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 韓国 / 日本植民地時代 / 九龍浦 / 敵産家屋 / 資源化 / ツーリズム / 在朝日本人 / 引揚げ |
研究実績の概要 |
研究計画調書に記載した平成26年度の計画のうち、研究費の減額に鑑み、最初の計画を調整して実施した。平成26年度には、6月に予定した九龍浦豊漁祭や10月の九龍浦馬牧長城祝祭の観察調査は取りやめ、①九龍浦関連植民地期資料の収集、②滄州里・長安里の社会組織調査・植民地期建物の写真資料化、③九龍浦住民の余暇生活・生涯学習の予備調査、④戦後九龍浦から日本に引き揚げた在朝日本人のうち日本で組織された九龍浦会の会員から九龍浦の植民地期写真の収集、記憶の語りの記録、九龍浦会そのものに関する調査を実施した。①の場合、九龍浦邑図書館や九龍浦邑住民センター(旧「九龍浦邑事務所」)や浦項市文化院などでは地方市史類以外見つけられなかった。しかし、国立中央博物館などで「九龍浦港修築工事費補助」(1923)、『浦項誌』(1935)などを見つけたので参考になり、さらに、釜山日報から九龍浦関連記事をマイクロフィルムで閲覧可能と知ったので、平成27年度に実施する予定である。②の植民地期建物の写真資料化は順調に進んでいるが、滄州里・長安里の社会組織調査では最重要インフォーマントだった婦女会長が不幸に会い、居所を移しているため、予定よりこの調査は遅れている。③は順調に進んでおり、平成27年度に継続調査する予定である。④も順調に進んでいる。昭和10年韓国の九龍浦で生まれたS氏(住職の子孫)や同年生まれのO氏(十河彌三郎の子孫)や昭和9年生まれのT氏(畳製造業)に会い、彼らの保管していた植民地期九龍浦の写真(神社のお祭りの風景や小学校の催し物など)や記録類と、九龍浦会の資料などを収集するとともに、植民地期九龍浦での暮らしや引揚げの体験、九龍浦会の活動などについて話を聞き、記録した。以上の調査研究の実績を踏まえて平成27年度に補足・集中調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた①九龍浦関連植民地期資料の収集、②滄州里・長安里の社会組織調査・植民地期建物の写真資料化、③九龍浦住民の余暇生活・生涯学習の予備調査、④戦後九龍浦から日本に引き揚げた在朝日本人のうち日本で組織された九龍浦会の会員から九龍浦の植民地期写真の収集、記憶の語りの記録、九龍浦会そのものに関する調査は、①及び②に予定と異なる状況は生じたが、全般にはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、まず、平成26年の調査データを丁寧にまとめながら、問題点や新たな課題を確認しておく。次に、8月には平成26年に予定通り実施できなかった滄州里・長安里の地域社会の社会組織調査と一緒に、生業の実態や文化に焦点を当ててフィールドワークを行う予定である。そのあとの2回目の現地調査前まで、1回目の8月の現地調査のデータをまとめ、成果と課題を確認しておく。そして、1月(もしくは2月)に2回目のフィールドワークを実施するが、このときは、セマウル協議会などの制度的社会集団や地域発展推進会などのボランタリーな社会集団およびその活動にフォーカスを合わせて調査する予定である。また、現在コンタクトは取れないが、「九龍浦史」を執筆しているといわれている郷土史家たちのグループへのアプローチを試み、お話しが聞けるように努める。ほかには、九龍浦近代歴史文化通りの観光化の進捗状況を随時調査したいと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
九龍浦の滄州里・長安里の社会組織調査において重要インフォーマントの一人である婦女会長の家に不幸があり、住まいを移してしまったため、関係者への調査が遅れている。また、現在、「九龍浦史」を執筆・編集中といわれている地元郷土史家ともコンタクトが取れない状態が続いたため、当初計画していた平成26年12~平成27年1月にかけての現地集中調査の一部を平成27年度に延期して行うことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
以上の事情を踏まえ、平成27年8~9月に前年度の未実施現地調査を行う予定である。その前までに日本からもキーインフォーマントへのコンタクトを試みる予定である。さらに、平成26年度の現地調査時に本調査研究の紹介を若干行い、調査のお願いをした滄州里・長安里の里長にさらに詳しいインタビュー調査を実施する計画である。
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備考 |
英語版ニューズレターに次の記事を掲載した。What’s happening to Japanese colonial architecture in postcolonial south Korea? Center for Northeast Asian Studies. The Bulletin CNEAS. Vol. 2
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