テキサス農工大学のProckop 教授より供与されていたヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いて、MSCによる移植肺機能不全予防効果の検討を行った。MSCの肺動脈投与、気道投与いずれにおいても再灌流6時間後に回収をした気管支肺胞洗浄液中のタンパク濃度はコントロール群に比して低値を示し、移植肺の障害が軽減していることが示唆された。気管支肺胞洗浄液中の細胞数は肺動脈からのMSCの投与においては低値を示したが、気管支からのMSCの投与では差異を認めなかった。一方で気管支肺胞洗浄液中のTNFαなどのサイトカインはMSC気管支投与において差異を認めた。組織学的な評価や免疫染色によるマクロファージ、リンパ球、好中球等の評価中である。成果は専門誌に投稿中である。 今後の発展としてMSCのいずれの機能より抗炎症、移植肺機能不全の低減効果が得られているかを確認し、それらを用いた移植肺機能不全の治療効果の検討が期待される。MSCのコンディションメディウムやMSCより分泌されるmicrovesicle等による急性肺障害や敗血症の治療、予防効果が報告されている。これらとラットまたはマウスの肺移植モデルを用いた基礎研究へ展開することを考えている。臨床応用をするためにはブタ肺移植モデルでの肺動脈直接穿刺によるMSCの投与や気管支鏡(内視鏡)を用いたMSCの移植直後の投与が必要となる。さらにはex vivo lung perfusionによる障害肺の治療効果を検討し、脳死肺移植の提供数の増加へ発展させたい。
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