研究課題/領域番号 |
26870043
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 創志 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 助教 (80649749)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 炭化ケイ素 / MOS構造 / 経時劣化絶縁破壊 / 破壊痕 / 発光解析 / OBIRCH解析 |
研究実績の概要 |
前年度にSiC MOSキャパシタの経時劣化絶縁破壊(TDDB)試験後の絶縁破壊痕に対して断面TEM-EDS分析を行い、破壊痕表面の元素組成の変化を評価した。この結果から絶縁破壊痕の形成メカニズムについて熱力学的な考察をまとめなおした。(Microelectronics Reliability) 本年度は絶縁破壊痕形成後の状態を評価・考察することで、絶縁破壊痕形成メカニズムの解明に迫る研究を行った。 1.Al電極を用いたSiC MOSキャパシタのTDDB試験後のゲート抵抗は、低抵抗モードと高抵抗モードが見られた。測定系に直列抵抗を挿入して再評価した結果、高抵抗モードがより高い頻度で見られた。また、破壊痕が連なる数も極端に少なくなった。これは、挿入した直列抵抗により大きくなった絶縁破壊時の充放電の時定数に起因すると考えられる。(22nd International Symposium on the Physical and Failure Analysis of Integrated Circuits)また、絶縁破壊後のキャパシタについて発光解析を実施し、発光が認められた点の断面TEM-EDS分析を行った結果、低抵抗モードのキャパシタについてはAl-Si-C化合物が形成されており、基板縦方向に伸びる欠陥が見られた。一方、高抵抗モードのキャパシタについては特徴的な不良は見られなかった。(23rd International Symposium on the Physical and Failure Analysis of Integrated Circuits) 2.Poly-Si電極を用いたSiC MOSキャパシタについて検討した。Poly-Si電極の場合も、TDDB試験後のゲート抵抗は低抵抗モードと高抵抗モードが見られた。発光解析の結果、発光が認められた点において断面TEM分析を行い、Al電極の場合と同様に基板縦方向の欠陥が見られた。一方で、SiC基板と電極との化学反応は見られなかった。(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials 2015) 以上のように、破壊痕の形成はSiC基板中の欠陥との関連があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に構築を開始した絶縁膜信頼性評価中に光学顕微鏡像を撮影するシステムを用いて実験した結果、絶縁破壊現象を画像あるいは光として捉えるにはマイクロ秒からナノ秒の時間分解能が必要であることがわかり、追加の実験セットアップ構築検討を行っている。SiC MOSキャパシタの絶縁破壊後の現象については、本年度にエミッション顕微鏡と断面TEM分析を用いた故障解析を実施し、破壊痕周辺部の発光点においてSiC基板表面に縦方向の結果が見られることが明らかになった。来年度は、この故障解析で明らかになった、絶縁破壊後のキャパシタに見られたSiC基板表面の縦方向の欠陥が、絶縁破壊時に形成されたのかデバイス作製時から存在するのか明らかにする予定である。これにより、絶縁破壊痕形成メカニズムとSiC基板中の欠陥との関係が明らかになることを期待している。以上のように、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は次の点に着目して研究を推進し、3年間の研究をまとめる方針である。 1.絨毯爆撃状破壊痕の形成過程を、マイクロ秒の分解能で画像撮影、もしくはナノ秒の分解能で発光量を評価する。破壊痕は1つ1つがシリーズに形成されると予想している。 2.絨毯爆撃状破壊痕の淵において発光解析による発光が見られる点では、SiC基板表面に基板縦方向の欠陥が認められた。この欠陥がデバイス作製時から存在するものか、絶縁破壊により発生するものか明らかにすることで、絶縁破壊痕形成メカニズムの一端を明らかにする。 3.SiC MOSキャパシタの絶縁膜厚、電極面積、電極膜厚を変化させることで、破壊痕の形状や数がどのように変化するか調査することで、絶縁破壊痕形成メカニズムへデイバスパラメータが及ぼす影響について理解する。 4.この破壊痕形成メカニズムの研究から発することのできる、SiC MOS構造の絶縁膜信頼性を向上させるためのメッセージまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は当初の予算を使い切り、2016年度に行う予定であった、発光をナノ秒単位で評価するシステムを構築するための予算の前倒し請求を実施した。実際には、システムの設計検討に時間がかかり、このシステム構築に必要な物品の発注・購入には至らなかったため、予算残額が生じた次第である。
|
次年度使用額の使用計画 |
予定通り、発光をナノ秒単位で評価計測するためのシステムを構築するための物品の発注に使用する計画である。
|