ワイドバンドギャップ半導体材料としてSiC基板を用い、厚さ40 nmの熱酸化膜上にAl電極及びpoly-Si電極を形成したMOSキャパシタにおける絶縁破壊痕形成メカニズムの解明に取り組み、以下に述べる知見を明らかにした。 1.破壊痕の表面には、厚さ2nm程度のC層と数十nmのSi-rich層が形成されることを、透過型電子顕微鏡による観察および組成分析により明らかにし、これに関するモデルを提案した。 2.電極材料が低融点材料であるAlでも高融点材料であるSiでも、破壊痕は形成され、破壊痕形状の電極材料の融点に対する依存性は小さい。 3.破壊痕の形状は測定系の時定数に依存しており、本研究における標準である測定系に対して1kΩの外部抵抗を付加することで、標準条件では絨毯爆撃状に形成される破壊痕が、数個のみ形成されるようになった。また、抵抗を付加することで、破壊痕がシリーズに形成される様子も明らかになった。 4.絶縁破壊後のゲート抵抗は、標準測定条件では高抵抗値モードと低抵抗値モードの両方が見られた。一方、直列抵抗を付加することで、高抵抗値モードの頻度が大きくなった。 5.絶縁破壊後に低抵抗モードであるMOSキャパシタについて、発光解析と透過型電子顕微鏡観察を行うことにより、破壊痕底部にSiCエピタキシャル層縦方向の欠陥が存在することを明らかにした。また、Al電極を用いた場合には、欠陥部にはAlとSiCの反応により形成された合金層が見られた。一方、poly-Si電極を用いた場合は、欠陥部分での電極材料と基板材料の反応は見られなかった。 6.絶縁破壊痕にみられる基板縦方向の欠陥は、SiC基板製造プロセス起因か絶縁破壊起因かを明らかにする実験方法の実証を行った。X線トポグラフを用いることで、MOSキャパシタ形成後もSiCエピタキシャル層表面の結晶欠陥の評価が可能であることを実証した。
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