研究課題/領域番号 |
26870044
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠原 好之 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (20511835)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 精神神経疾患 / 神経内分泌 / ホルモン / ストレス |
研究実績の概要 |
神経内分泌ホルモンのオキシトシンはストレスや不安、社会性に関して機能することはよく知られる。ストレスによってオキシトシンの応答が起きるため、妊娠期のストレスによって惹起されるオキシトシンが胎児の脳に何らかの影響を与える可能性があることが推察されるが、その観点での検討は行われていない。妊娠期のストレスは将来の精神神経疾患発症のリスクを高めることが知られているため、妊娠期のストレスによって惹起されるオキシトシンが精神神経疾患の脆弱性に対して何らかの寄与がある可能性が考えられる。本研究ではマウスを用いて検証を行った。前年度までに胎児期のオキシトシン曝露によって将来の不安行動が増大すること、および社会性が低下することを見出した。一方でうつ様行動には変化が見られなかった。 今年度は胎児期のオキシトシン曝露によって不安行動および社会性の低下が引き起こされるメカニズムの解明のために、情動行動や認知機能、ストレスに重要である扁桃体、前頭前野皮質、視床下部のそれぞれの領域における遺伝子発現変化の検討を進めた。また、オキシトシン曝露を受けた直後の胎児脳についても検討を行った。遺伝子変化の解析にはマイクロアレイ法と定量PCR法を用いた。 遺伝子発現変化の測定の結果、扁桃体、前頭前野皮質、視床下部の各領域および胎仔脳において数多くの発現変化が生じており、詳細なメカニズムについては現在検証中である。特筆すべき点として、情動行動の中枢である扁桃体において、胎児期のオキシトシン曝露により当該領域のオキシトシン遺伝子発現が約4分の1に減少しており、このことは行動変化を説明する機序の一つとなると推察される。 本研究結果は妊娠期のストレスによるオキシトシン応答が、仔の将来の精神神経疾患の脆弱性に関わることを示唆する結果であるが未だ不明な点も多く、今後更なる検証が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに見出した胎児期のオキシトシン曝露による不安行動の増大と社会性の低下に対して、遺伝子発現変化の観点からメカニズムを説明する手がかりを得られているため、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
胎児期に受けるオキシトシン曝露が情動行動や社会行動に影響を与えることについて、扁桃体領域におけるオキシトシン遺伝子の大幅な発現減少など、メカニズムの一端を捉えることはできているが、未だ体系的なメカニズムの解明には至っていない。今後は脆弱性を引き起こすメカニズムの解明を進めるとともに、遺伝子発現変化のみならず神経の組織学的な解析やホルモンの測定などを行うことで統合的な解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外学会への参加を行わなかったため、差額が生じた。さらに予定していた網羅的遺伝子発現変化解析用の試薬が生産中止になったため、再検討が必要となり、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究内容について国内学会・国際学会にて発表を行う。本研究により見出した現象のメカニズムの解明のためには網羅的遺伝子発現解析やDNAのエピジェネティックな解析、組織学的な解析などを行う必要があるためその費用に充てる。
|