本体と独立して全方向に受動回転できる球殻を持つマルチコプターの研究開発を行い,成果を論文,実証実験等で公表した.成果の概要を下記に示す. 開発したマルチコプターは,球殻,受動ジンバル,マルチコプター本体から構成される.球殻はジオデシックドームを発展させた軽量頑強な構造であり,錯雑した環境内を飛行する際でも,球殻の中の本体およびジンバルを保護できる. 受動ジンバルは,本体と球殻の間に搭載されている.3自由度を有するため,本体と球殻は独立に受動回転できる.これにより,環境に球殻が衝突した際,球殻のみが回転し,本体の姿勢はほぼ乱れないため,安定して飛行を継続できる.また,床や天井,壁面に球殻を接触させ,球殻をタイヤのように使いながら構造物に沿って転がることができる. マルチコプター本体は,一般的なクワッドローター機であり,ラジコン飛行機と同様の操縦感で操縦できる.球殻とジンバルにCFRPパイプを採用し軽量になるよう工夫したため,本体に複数台の空撮用カメラやリアルタイム映像伝送器を搭載できるペイロードを実現できた. 以上の特長の組み合わせにより,錯雑した環境の中で,複雑な制御を用いることなく,マルチコプターを構造物の近傍で安定して飛行させることに成功した.錯雑環境での飛行は既存のマルチコプターのよく知られた一般的な問題であり,これを解決した本研究は,国内外の招待講演,雑誌論文,査読付き学会,TV取材等で広く注目された.
|