平成27年度は、ブルッカイト型酸化チタン、単斜晶系酸化チタンであるTiO2(B)の結晶成長制御、および、昨年度に引き続きルチル型酸化チタンの結晶成長制御とその機構の解明に注力した。以下に主な成果を概括する。 (1)ブルッカイト型酸化チタンの形態制御:非共有電子対を有する窒素を含有するピコリン酸やグリシンといった化合物を添加物として用いると、添加物を用いていないときに析出する長軸がc軸に平行な棒状結晶が得られたが、その先端が丸みを帯びる傾向があることを見出した。透過型電子顕微鏡を利用した詳細な観察および解析を行ったところ、先端には無数のステップが確認された。すなわち、添加物を用いることで、ステップやキンクが多数存在する不安定な面を露出させることに成功した。 (2)TiO2(B)の形態制御:いずれの場合においても、数nm―十数nmのナノ粒子しか得ることができなかった。一方で様々な添加物存在下でも合成が困難なTiO2(B)を単相で作製可能なことが明らかとなった。 (3)ルチル型酸化チタンの形成制御およびその機構の解明:反応条件を調節することで、{131}といった高次数面や不安定な{001}の露出割合が多い、一辺が100nm―200nm程度の直方体状ルチル結晶が合成可能であることを見出した。反応初期段階ではアナターゼとブルッカイトが析出し、反応時間を長くすることで、直方体状ルチルが析出することを確認した。得られる粉末中のルチル相の生成割合が増加するにつれアナターゼ相の減少が確認されたが、ブルッカイト相の存在量は、反応時間に係わらずほぼ一定であった。種々の条件での実験より、反応初期に析出したアナターゼやブルッカイトがルチルの成長を阻害することで、高次数面や不安定な低次数面が露出したルチルを合成可能であったと考えている。
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