研究課題/領域番号 |
26870049
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
道祖尾 恭之 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10375165)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 装置開発 |
研究実績の概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた非弾性トンネル分光(STM-IETS)の成功で、分子内の“振動励起”をキーワードとした走査プローブ法による分子操作は、注目度が非常に高まっている。しかしながら、STMはトンネル電流をプローブとするため、低導電性試料に対応することが非常に困難である。一方、原子間力をプローブとする原子間力顕微鏡(AFM)は、近年分子内の結合をも検出できるところまで発展してきている。本研究では、単に像観察を達成しようというものではなく、特に低電子伝導部位をもつ分子を対象にしたとしても、原子間力をプローブとしたAFMで的確に分子内の結合部を捉え、さらに探針の位置を精密に制御することでトンネル電流をプローブとしたSTM-IETS法を適応できるAFM/STM装置を開発し、 “複合計測による実空間観察に基づいた振動モードの検出を目標としている。 26年度は、主に既存の温度可変超高真空STMに現有の装置にAFM機能を持ための改良を行った。本研究では一般によく用いられている光学式のカンチレバー変位検出ではなく、周波数変動を水晶振動子の共振周波数の変化として検出する位相同期(PLL)方式を採用した。これにより、光による輻射熱が問題となる液体ヘリウム温度の実験環境でも温度上昇を最小限に抑えることができた。一方で、振動子の励起応答信号伝達のために新たな配線を追加したことで外部振動の測定系への影響が増大したため、除震機構にも改良を加えた。現在、超高真空中での性能評価を継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
26年度の目標は、DNA鎖等比較的大きな分子系に対するSTM/AFM観察の実証であったが、改造を加えた装置では主に外部からの振動混入が大きくなり、原子分解のレベルでの像観察に必要なレベルまでの改良が達成できていないため、4)遅れているとした。理由としては、1)発注した振動子の納品が大幅に遅れたこと、2)制御装置が故障したが代替品が無く復旧が年度末までかかってしまったためである。除震機構には改良を加え性能は向上してきている。
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今後の研究の推進方策 |
上記外部振動は、除震機構の改良と、建物の改修工事終了とともに着実に減少してきているので、当初計画に大幅な変更は加えず推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存装置の制御部分が故障し、復旧に必要な期間・費用が確定できなかった。そのため、研究調査費の使用と当初予定していた物品購入を一時見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
装置はほぼ復旧しており、研究は推進可能と判断した。 一部真空部品の購入を追加するが、当初の研究計画から大きな変更は無く使用する。
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