研究課題/領域番号 |
26870050
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山中 謙太 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30727061)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生体用Co-Cr合金 / 熱間加工 / 転位組織 / 放射光回折 / ラインプロファイル解析 / マルテンサイト変態 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
平成27年度は前年度に引き続き熱間圧延により作製したCo-Cr-Mo合金を主な対象として、熱間加工中に導入される格子欠陥と力学的挙動の関係について調査した。 まず、ラボX線回折(XRD)ラインプロファイル解析の結果を基に熱間圧延材の転位組織について詳細に評価した。新たにConvolutional Multiple Whole Profile fitting (CMWP)法を用いた解析を実施し、熱間圧延中に転位密度に加えて積層欠陥が多量に蓄積されることを定量的に明らかにすることができた。また、最近提案された積層欠陥による強化モデルを用いて積層欠陥の導入による高強度化を実証した。これはFCC合金において初めての報告例である。本研究成果は本合金が熱間加工温度においても極めて低い積層欠陥エネルギーを有していることに起因しており、本合金系における新しい強化手法を提案するものである。 一方、熱間圧延により作製したCo-Cr-Mo合金の室温変形中に起こるひずみ誘起マルテンサイト変態についても研究を行った。具体的には、εマルテンサイトの形成に伴うγ母相中の転位組織の変化をXRDラインプロファイル解析により調査し、εマルテンサイトが形成する降伏応力直後においてγ相の転位密度の減少し、転位間の相互作用が大きく変化することがわかった。また、熱間圧延での加工率のが大きいほどその後の引張変形において早期に(わずかな引張ひずみで)ひずみ誘起εマルテンサイトが形成することを明らかにした。これらの結果は転位および積層欠陥の規則的な積み重なりによりεマルテンサイトが形成することとよく対応しており、初期の格子欠陥の密度や状態を制御することで本合金の力学特性の大きな影響を及ぼすマルテンサイト変態を制御することが可能であることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、引張変形中のひずみ誘起マルテンサイト変態に及ぼす初期格子欠陥の影響をXRDラインプロファイル解析により明らかにすることができた。また、熱間圧延に導入される積層欠陥と力学特性の関係についても定量的に調べ、新たな強化メカニズムを提案することができた。平成28年度に予定していた疲労試験もすでに開始しており、順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は室温における疲労試験を中心の研究を進める予定である。熱間加工材に加えて焼鈍材についても疲労試験を行い、疲労変形中の転位組織の変化についてXRDラインプロファイル解析を実施する予定である。一方、中性子回折についても予備実験を行った。本合金系への中性子解説の適用は初めてであるが、経験の多い鉄鋼材料に比べ回折強度が低く、放射化についても注意が必要であることがわかった。これらの結果を踏まえて、平成28年度に再度J-PARCにて中性子回折実験を実施予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は合金試作外注費を計上していたが、関連する他の経費で調達した金属素材を使用できたため、余りが生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度実施する中性子回折実験用の試験片加工費及び実験旅費、国内学会・国際会議での発表を予定している。さらに、実験に必要な消耗品等を購入する予定である。
|