本年度は、韓国、英国、日本における現地調査を実施し、人の移動と宗教によって取り結ばれる新たな共同体の実態と特徴について明らかにした。 4月16日~18日、5月21日~23日、8月20日~24日に実施した韓国における現地調査では、2カ所のモンゴル人教会において参与観察を行い、彼らの宗教生活および宣教活動の実態を明らかにした。また、8月26日~28日に実施した英国における現地調査では、在英モンゴル人キリスト教徒に聞き取りを行い、キリスト教徒の国際的なネットワークと英国における活動の実態について調査した。 これらの現地調査および関連資料の分析を通して、国境を越えた宗教的ネットワークが広がっており、特に異国にくらすモンゴル人にとって、宗教的な連帯が日常生活に関わる情報交換や相互扶助などの宗教生活以外の文脈においても重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、キリスト教に関しては、民族意識が異国におけるモンゴル人およびモンゴル系諸民族へ向けた宣教活動にとって重要な動機となっており、在韓のモンゴル人教会がそのような民族意識を醸成し、宣教活動を活性化させる一つの在外拠点となっていることも明らかとなっている。 一方で、仏教についても、活仏などのグローバルな活動が日本や米国にくらすモンゴル系諸民族同士を結びつける機会を提供すると同時に、異国における「モンゴル人(あるいはモンゴル系民族)」としての民族意識の活性化に寄与している実態が明らかとなった。 以上の成果を学会・研究会における発表および論文のかたちで公開した。
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