研究課題/領域番号 |
26870054
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
池田 真教 東北大学, 加齢医学研究所, 教育研究支援者 (80645010)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 染色体分配 / キネトコア / 紡錘体 / 微小管 / 分裂期キナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、体細胞分裂期での染色体の正確な分配を保証する双方向性結合の形成過程を、微小管に対するキネトコアの2つの結合様式(側面結合と末端結合)の使い分けという視点から連続的に捉え、Plk1、Mps1、Bub1およびAurora Bの各種キナーゼを中心に染色体動態の変化に応じた分裂期キナーゼの機能と、その連動性を解明することを目的とする。平成26年度では、染色体動態の変化に応じたキネトコア-微小管結合、キネトコア構造、および微小管動態の変化における分裂期キナーゼの機能的役割と、その時空間的機能調節機構の解明を計画し、以下の結果が得られた。各種キナーゼの発現抑制あるいは阻害細胞でのキネトコア-微小管結合の様式を調べた結果、Aurora BとPlk1阻害細胞でのみ末端結合、あるいは側面結合の著しい増大がそれぞれ認められた。また、免疫染色を用いてキネトコア-微小管結合の形成に関わるキネトコア分子23種の局在を解析した結果、側面結合に関与する分子のほとんどはAurora Bの活性に依存するのに対し、Plk1の活性には依存しないことを明らかにした。興味深いことに、Bub1とMps1のキネトコア局在はPlk1阻害細胞でも維持されること、特にMps1のキネトコア局在はPlk1阻害細胞では著しく増大すること、Plk1はMps1を直接複数箇所リン酸化することを見出した。現在、Plk1によるMps1リン酸化の機能解析を進めている。また、Plk1のキネトコア局在はAurora B阻害細胞でも維持されることがわかった。以上のことから、Aurora BやBub1およびMps1は側面結合の形成を促進するのに対し、Plk1は末端結合の形成あるいは側面結合を末端結合に変換する機能を担う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種キナーゼ阻害細胞でのキネトコア-微小管結合の様式と、キネトコアの構造を調べることで双方向性結合の形成過程におけるPlk1、Mps1、Bub1、およびAurora Bの機能的役割を側面結合と末端結合という2つのキネトコア-微小管結合モジュールに分類することに成功した。特に、側面結合に関与する分子群はAurora Bキナーゼの活性により調節され、Aurora BとPlk1という2つのキナーゼが対立することで側面結合と末端結合を使い分け、効率的に双方向性結合が形成される可能性が示唆された。また、各種分裂期キナーゼのキネトコア局在に対するキナーゼ間の相互関係を明らかにしたこと、さらにPlk1とMps1の直接的相互作用を見出した点は、各種キナーゼが連動して時空間的に機能を調節する可能性を示唆するものであり、次年度の計画を遂行する上で重要な知見である。以上のことにより、平成26年度の計画はほぼ達成できたと判断でき、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画では、キネトコア-微小管結合の形成過程におけるPlk1、Mps1、Bub1、およびAurora Bの機能的役割と、各種分裂期キナーゼのキネトコア上での相互関係、およびPlk1とMps1の直接的相互作用を見出した。Plk1によるMps1リン酸化の機能解析を進めるとともに、染色体動態の変化に応じた各種分裂期キナーゼの活性・局在を経時的に解析する。また、各種キナーゼを人為的にキネトコアに固相化し、種々のキナーゼの局在・活性の変化、キネトコア-微小管結合、キネトコア構造、微小管動態の変化を解析し、時空間的に分裂期キナーゼ間の相互作用と各種キナーゼの動態変化の生理的意義を明らかにする。一方で、キネトコア-微小管結合や、それに伴いキネトコア間に生じる張力、さらには微小管動態を人為的に操作し、各種分裂期キナーゼの局在・活性の変化を解析することで、各種分裂期キナーゼの動態変化と染色体動態の変化の相関関係を明らかにし、分裂期キナーゼの機能的差異を生み出す機構を解明することが双方向性結合の形成過程における分裂期キナーゼの連動性を理解する上で今後推進すべき課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では染色体動態の変化に応じた分裂期キナーゼの機能と、その連動性を解明することを目的とするため、各種分裂期キナーゼによる基質のリン酸化部位に対する抗体の作製や、その解析に必要な変異体を作製するためのプライマーおよびsiRNAなどのオリゴヌクレオチドの購入に多額の費用を必要とすることが想定されたため、効率的に研究を推進した結果、予想額を下回る物品費で押さえることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
各種分裂期キナーゼによる基質のリン酸化部位を認識する抗体の作製や、その解析に必要な変異体を作製するためのプライマーおよびsiRNAなどのオリゴヌクレオチドの購入に多額の費用を必要とするため、次年度の研究費と合わせてこれらの研究試薬および研究の遂行に必要な細胞培養試薬・器具、生化学実験用試薬・器具等の消耗品の購入費、国内学会参加費、論文投稿費等に使用する。
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