研究課題/領域番号 |
26870055
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
麻田 雅文 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (30626205)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソ連 / 満蒙 / 中国東北 / モンゴル / スターリン / 日ロ関係 / 中ロ関係 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績は主に三つある。 ①第一に、単著として『満蒙 日露中の「最前線」』(講談社、2014年)を刊行した。本書は、19世紀末から1945年にいたる、ロシア帝国/ソ連と「満蒙」地域の関係を、概説的に解説する一般書である。これまでの中東鉄道に関する研究に加え、国際政治史の研究の蓄積を加味した。これにより、ロシア帝国/ソ連にとって、この地域がロシア極東の安全保障を確立する上で、いかに重要であったかを立証することができた。さらに、市販の書籍ということで、広く研究の成果を社会に発信する事ができた。 ②第二に、第24回近現代東北アジア地域史研究会大会において、シンポジウム【≪テーマ≫ 「ソ連中枢から見た東北アジア―1920年代から30年代―」】を組織した。このシンポジウムを通じて、1920年代から30年代の東北アジアの国際関係において、ソ連というものが決定的な役割を果たしていたことを検証できた。具体的には、中国東北(満洲)、朝鮮、モンゴル、新疆を研究する研究者が報告し、ソ連と国境を接する地域について検証を加えた。これにより、地域によってソ連はたくみに自己の関与を変化させる、柔軟な政策をとっていたことが分かった。 ③2015年2月28日に、シンポジウム「ソ連とモンゴルから見た「ノモンハン事件」(1939年)」を、東北大学東京分室で開催した。上記のシンポジウムにより、1930年代末にソ連がどのように「満蒙」地域の防衛を考え、ノモンハンへの衝突に至ったのかを、綿密な実証研究の報告で考察することできた。具体的には、ノモンハンの戦場における命令系統に、日本軍と同じく現地と中央との間で齟齬があったことが報告された。また、ノモンハンの戦場における軍事遺跡調査による、戦跡からノモンハンの戦役に新しい光を当てることができること、モンゴル側でも新しい研究がここ10年の間に、急速に蓄積されていることが報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①単著の刊行は、計画の申請時には予定していなかったものであるが、科研費の補助金もあり、刊行に至ることができた。これにより、従来の研究をより一般に向けて公表する事ができたこと、ならびに、東アジアの国際政治の大きな枠組みの中で、本研究を位置づけることができたのは、大きな成果である。
②また、2回のシンポジウムも無事に成功に導き、東洋史・日本史・西洋史(ロシア史)の垣根をこえた、近現代の東北アジア史の構築に向けて、大きな宣伝効果があった。
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今後の研究の推進方策 |
近現代の東北アジア史におけるソ連の役割を、申請者が一人で解明する事は不可能である。今後の研究課題として、上記の研究目標に関心を寄せる研究者のつながりをさらに拡大するべきかと思う。
さしあたり、これまでに開催した二回のシンポジウムの報告に加え、他の寄稿者も交えた、論文集の作成を2015年度の目標としている。論集はすでに出版社の選定を終え、執筆者より草稿を回収する段階にある。本論集の出版により、ソ連のこの地域に対する外交の多様性と、一貫性の双方が判明することが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年2月28日のシンポジウム「ソ連とモンゴルから見た「ノモンハン事件」(1939年)の際、一名を岡山から招聘したが、その旅費の見積もりにおいて、当初の予想よりも旅費が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度の旅費に組み込む。
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