本年度は、以下の三点を中心に研究を行った。第一に、奉天派の張作霖とソ連が、思想的にはまったく相容れない中で、なぜ1924年に奉ソ協定が結ばれたのかを考察した。この点については昨年度に学会報告を行い、論文にまとめたものの、未だ公刊していない。ソ連と東アジアの論文集を計画中で、その中に収録する予定である。 第二に、日本のシベリア出兵(1918~1925)を中心に調査を行った。 日本側の動向は、外務省編『日本外交文書』や、陸軍参謀本部編『大正七年乃至十一年西伯利出兵史』(上・中・下巻、新時代社、一九七二年)を中心にして、史料の刊行が進んでいる。 一方、ソヴィエト政府からの見方については、欧米やロシアで研究が進んでおり、それらの関連する文献の収集に努めた。公文書館では、国立国会図書館憲政資料室での調査が中心であった。 なお、研究の成果は、2016年度に単著として刊行する予定である。こちらの研究については、特に日本の内閣、特に原敬内閣の動向に着目した。原敬の政治的手腕については賞賛が集まるが、シベリア出兵は彼の手腕を以てしても、解くのが難しい難問であった。 第三に、蒋介石と日中戦争、ソ連との関わりについてである。こちらについては、台湾で国史館を中心に史料収集を行い、関連文献の収集に努めている。2016年度から始まる若手研究(A)「日中戦争下におけるスターリンと蒋介石の往復書簡の分析」につなげ、2016年度以降、研究成果の発信に努めてゆく。
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