研究課題/領域番号 |
26870058
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柳沼 晋 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (80516518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アモルファス合金 / ナノワイヤー / ガスアトマイズ / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、ガスアトマイズ法を用いた一括大量生産技術を基盤に、触媒能をもつPt基ならびにPd基アモルファス合金から長尺なナノワイヤーを作製し、表面のナノ結晶化・ナノポーラス(多孔質)化を有機的に組み合わせ、この新規素材であるアモルファス合金ナノワイヤーの高い耐久性と機械的強度を活用した3次元構造・無担持電極を開発するための知見を得ることを目的とする。本年度は、ガスアトマイズ法を用いたアモルファス合金ワイヤーの設計指針の確立に向けて、ガラス形成能が高いPd-Cu-Ni-P合金のナノワイヤー化から着手し、ワイヤーの形成と直径分布に温度が及ぼす影響を調べた。 ワイヤーが形成され得るのは、溶湯の粘性が高く、液糸から液滴への分裂前に固化する場合だと考えられるが、アモルファス合金の粘性は温度に大きく依存する。そこで、異なる温度でPd-Cu-Ni-P母合金をアトマイズし、生成したワイヤーおよび粉体は、XRD、SEM-EDSを用いて構造解析、組成分析を行った。次に、各温度でのSEM像からワイヤー径と粒径の頻度分布を求め、統計分布関数をフィッティングすることで、サイズ分布を比較した。 その結果、融点よりも十分に高い温度では粉体が主要生成物であり、温度が低くなるにつれてワイヤーの割合が増加し、融点以下ではワイヤー形成が主となることが分かった。また、ワイヤー径と粒径は対数正規分布に従い、高温ではメディアン径が減少することを見出した。これらの温度効果は、オーネゾルゲ数と呼ばれる無次元数で類別でき、ワイヤーのナノ化にとって重要な知見である。さらに、このナノワイヤーは触媒機能が活性なPdから構成されるアモルファス合金であることから、燃料電池や水素生成ための高耐久性触媒材料の開発に繋がるという意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、温度を主要パラメータとして様々なアトマイズ条件を検討しており、アモルファス合金のナノワイヤー作製において必要となるノウハウを蓄積できたため。また、Pd基アモルファス合金ワイヤーについては、研究計画で述べた電気化学測定による活性表面積(ECSA)の評価やDSCによる熱特性評価・熱処理も推進することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に取り組んだアモルファス合金の中で、いち早くナノワイヤーの作製に成功したPd基アモルファス合金を優先させ、研究を継続する。今後、ワイヤー構造のより一層の長尺化、微細化、均一化のため、温度依存性に加えて、ガスの種類や圧力をはじめとした曵糸速度に直結するパラメータを最適化しアトマイズ工程を確立した上で、ナノ結晶化とナノポーラス化の制御、それらが比表面積、耐久性、触媒活性に及ぼす影響の評価を進めていく計画である。また、本研究の進展を図るため、国内学会や国際会議における調査・発表を積極的に行いたいと考えている。
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