平成28年度は健常若年者25名50膝、片側の変形性膝関節症患者15名30膝を追加でデータ収集ならびに解析を行なった。その結果、片側の変形性膝関節症患者において罹患膝では反対側の膝に比べ有意に膝関節筋の筋厚や膝蓋上包の動きが低下していることが明らかとなった。したがって、変形性膝関節症患者における膝関節筋の機能低下は、歩行やADLなどの生活様式によって生じるものではなく、変形性膝関節症そのものが関与すると考えられる。 研究期間全体としては、変形性膝関節症患者52名74膝、健常高齢者50名100膝、健常若年者75名150膝を対象に超音波診断装置を用いて膝関節等尺性伸展時の膝関節筋筋厚や膝蓋上包の動きを測定した。また変形性膝関節症群では、膝関節可動域や疼痛、重症度を測定し、膝関節筋機能との関連を検討した。その結果、膝関節筋は加齢とともに筋萎縮および機能低下を生じるが、変形性膝関節症では加齢による変化よりもさらに同筋の筋萎縮や機能低下が生じることが明らかとなった。また変形性膝関節症群では、膝関節筋機能と膝関節可動域、疼痛、重症度と有意な相関が認められ、膝関節筋の機能が低下しているほど、可動域制限や疼痛が生じることが明らかとなった。 以上より、膝関節筋の機能低下は変形性膝関節症の病態や進行と関連があると考えられ、変形性膝関節症に対する理学療法では、膝関節筋も重要な治療対象部位の一つであることが示唆された。
|