前年度まで継続的に実施してきた,グリーン・ツーリズム運営農家対象のインタビュー調査を,異質性認識のあり方という視点で考察した。中でも,共同研究者とともグリーン・ツーリズム運営場面のフィールド調査も実施したA夫妻に焦点をあて,夫妻それぞれが,自らにとって異質な他者をいかなる存在として位置付けてきたのかを分析した。 その結果,A1(妻)の他者認識の特徴として,(1) 他者を,他の多様な地域の出身者,他の多様な職業従事者として捉えている,(2) (1)の他者の目により,自身の身近な周囲に,新たな価値を見出している,(3) (1)で発見した新たな価値を,他者に知らせたいという希望をもっている,(4) (1)(2)(3)の循環が,新たな他者の受入継続の動機づけになっている,という特徴が導出できた。 また,A2(夫)の他者認識の特徴として,(1) 他者=子どもたちを次のように捉えている─a. 国籍や年齢にかかわらず,共通に「かわいい」,b. 属性ごとに,異なる背景をもつ,c. 個人ごとに,異なる性格・特技をもつ,d. 自分自身と,共通する部分をもつ,(2) (1)の子どもと,加えてそれにつながる他者との親密な関係作りを希望している,という結果が得られた。 以上の結果は,新たな異言語・異文化の教育機会を得難いものの,しかし被介護/被看護者として身近に外国人と暮らす可能性のある高齢者にとって,外国人をどのように捉えるべきかという認識の在り方にヒントを与える。2017年3月には本成果について,「異質性の認識─秋田県仙北市グリーン・ツーリズム運営農家の事例」として学会発表を行った。今後は,本成果を論文化するとともに,他の個々のグリーン・ツーリズム運営農家についても分析を進める。さらに,インタビュー・データすべてを量的手法によって統合的に分析することも試みたい。
|