研究課題/領域番号 |
26870063
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
丹野 剛紀 秋田大学, ベンチャーインキュベーションセンター, 准教授 (70390721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ分光 / 吸着 / 金属有機構造体 |
研究実績の概要 |
金属有機構造体(MOF)へのゲスト分子の吸着をテラヘルツ分光装置を用いて観測できることの実証を試みた.光源にGaP結晶を使った差周波発生型テラヘルツ発振装置を,検出器はDTGSを用いた.テラヘルツ波に対してほぼ透明な膜上に堆積させたMOFを,薄いプラスティック膜の光学窓を備えたチューブからなるガス流路上に置き,種々のガス(メタン,エタン,プロパン,ノルマルブタン,二酸化炭素)を通しながら0.5から5.5 THzの透過スペクトルを記録した.その結果,ガス種によってテラヘルツ透過スペクトルが明瞭かつ可逆的に変化する現象がみられた.このことは各ガス分子の吸着と脱離を反映していて,先行研究よって明らかになっている各ガスの吸着特性に良く一致している.また,複数あるMOFのテラヘルツ吸収バンドのうち,ガス分子の吸着・脱離によって影響を受けるバンドとそうでないバンドがあり,この違いから各バンドの帰属を求めることができる.特に微量のガス吸着でも完全に消滅してしまうバンドはMOF結晶の完全性を反映していると考えられ,そのようなバンドの帰属としてはフォノンが有力候補である. さらに,不明瞭ながら,キラルなMOFにキラル分子の蒸気を曝露した場合,テラヘルツ透過スペクトルがエナンチオマーによって異なる変化を呈する現象がみられた.このことは,MOFを基材としテラヘルツ光をプローブとして使う新規のキラル識別および光学純度測定の方法を与えうる発見である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
26年度の計画内容はほぼ終了し,すでに27年度計画に含まれるキラル識別の実験の進み一定の成果が得られているので,「当初の計画以上に進展している」と評価される.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を基盤した液相用プローブを試作し,テラヘルツ分光ではこれまで困難であった液体を対象にした高感度のMOF化学アナライザを作り上げる. 反射測定の系の構築においては,各パーツの加工精度や光路調整の精度が重要であるが,そもそも反射率が低い物質の場合には測定が困難になると予想されるので,DTGS以外の高感度検出器への変更なども検討する. キラル識別に関しては,より明瞭にエナンチオマー依存性が現れるようなMOF/ゲストの組み合わせを探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ガス吸着実験のための高純度ガスの使用量が増えて追加購入のため300,000円の前倒し支払請求をした分の差額.
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し支払請求以前の本来の27年度計画にあった物品費にあてる.
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