研究課題/領域番号 |
26870065
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
早尻 正宏 山形大学, 農学部, 准教授 (50466637)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域再生 |
研究実績の概要 |
本研究を開始して2年目となる2015年度は、第1に、前年度に引き続き福島県、とくに東京電力福島第一原子力発電所事故により深刻な森林汚染に見舞われた中通り地方の中山間地域を対象に追加調査をおこなった。第2に、全国で市町村数がもっとも多く、いわゆる「平成の大合併」を経て、合併自治体と非合併自治体が中山間地域に混在する北海道を事例地として、地域固有の環境資源である森林にもとづき、どのように地域の未来を描こうとしているのかを、基礎自治体(市町村)と、森林所有者の協同組織である森林組合との関係に焦点を当てて検証した。現地調査の結果、非合併自治体である北海道南富良野町では「1町1組合」体制が維持されており、こうした関係性を基盤にして、町は「地区組合」である南富良野町森林組合と協力し、木質バイオマス燃料の生産・販売をはじめとした各種の林業振興施策を打ち出し、実行に移していた。他方で、福島県内の複数市町村を組合地区とする(=「広域組合」)ふくしま中央森林組合では、組織運営・管理経営の「分権化」を進め、森林組合への長期施業委託を軸に森林整備を強力に推進するという古殿町の構想を実現するべく力を注いでいた。両事例は、基礎自治体と森林組合の連携は、「地区組合」に限らず、「分権化」を進めれば「広域組合」でも推進可能であることを示しており、「森林管理の地方自治」の課題と展開方向を考えるうえで重要な示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度における学術論文などの研究成果は次のとおりである。①「北海道総合開発計画にみる地域開発政策の一側面」(社会教育研究,33:69-84)、②「転機に立つ国土開発政策と地域産業振興の課題」(山形大学紀要(社会科学),46(1):31-61)、③「中山間地域への再定住を見据えた復興施策の展開と問題点」(北日本漁業,43:65-73)、④「人工林業・私有林業に軸足を移したゼロ年代の北海道林業」(林業経済,68(5):16-17)、⑤「地域林業の原発被災と担い手問題」(学術の動向,20(10):28-36)、⑥「自治体と森林組合の連携による森林資源を基盤とした『地方創生』」(協同組合研究誌にじ,653:73-81)――の6点であり、いずれも単著である。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の復旧・復興をめぐっては、2015年度で5年間の「集中復興期間」が終わり、2016年度以降は「復興・創生期間」という新たなステージに入った。東京電力福島第1原子力発電所事故により広範囲にわたり森林が放射能に汚染された福島県では複数の自治体で避難指示が解除される見通しである。この避難指示解除により制度上は営林可能なエリアが拡大することになるが、汚染地域における森林の再生、林業の再建に向けた動きは緒についたばかりである。今年度は、「復興・創生期間」を迎えた福島県において、市町村、県、国がそれぞれどのようなスタンスで被災地域の森林再生・林業再建に取り組もうとしているのかを、本研究課題である「森林管理の地方自治」という視点から検証する。
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