研究課題/領域番号 |
26870066
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
水野 恵 山形大学, 医学部, 医員 (00715394)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝内神経支配 / NASH / 肝移植 |
研究実績の概要 |
肝内神経支配と疾患との関係を評価するために、外科手術で得られた正常肝標本5例、ウイルス性肝炎の肝生検標本40例(B型肝炎20例、C型肝炎20例)、NASHの肝生検標本30例について、抗S100抗体と抗CD56(N-CAM)抗体を用いて免疫染色を行った。抗S100抗体による染色は、抗CD56抗体と比較して背景との鑑別が容易であったため、神経線維の定量には抗S100抗体を用いた。 門脈域を門脈の太さにより3群(小門脈域;門脈径≦50μm、中門脈域;50~100μm、大門脈域;>100μm)に分類し、門脈域ごとの免疫染色陽性の神経線維数を比較検討した。正常肝において、小門脈域の中で神経線維が陽性の門脈域は28.57%であった。中門脈域では50.91%、大門脈域では85.19%であり、門脈域が大きくなるほど神経線維が多かった。NASHでは小門脈域で23.44%、中門脈域で66.67%、大門脈域で92.31%であり、ウイルス性肝炎ではそれぞれ55.88%、80.65%、100%であった。 この結果から、ヒトの肝臓内では、炎症に伴って神経線維が増生していることが明らかになった。しかしNASHはウイルス性肝炎に比べると神経が少ない傾向にある。NASHにおいては、肝内の自律神経支配が低下するため、炎症を制御できなくなっている可能性が示唆された。 また、神経線維が中枢側で切断された場合の変化をみるため、移植後肝の肝生検標本もしくは再移植時の手術標本47例についても、同様に免疫染色を行った。その結果、大門脈域の太い神経は比較的保たれるが、末梢の細い神経線維は移植後早期から消失していることがわかった。自律神経支配が失われることで、肝内の代謝にも影響があったと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2014年度は肝内神経支配と疾患との関係を評価するために、外科手術で得られた正常肝標本5例、ウイルス性肝炎の肝生検標本40例(B型肝炎20例、C型肝炎20例)、NASHの肝生検標本30例について、抗S100抗体と抗CD56(N-CAM)抗体を用いて免疫染色を行った。その結果から、ヒトの肝臓内では、炎症に伴って神経線維が増生していることが明らかになった。また、神経線維が中枢側で切断された場合の変化をみるため、移植後肝の肝生検標本もしくは再移植時の手術標本47例についても、同様に免疫染色を行ったところ、大門脈域の太い神経は比較的保たれるが、末梢の細い神経線維は移植後早期から消失していることがわかった。 産前産後休暇および育児休業のため、2014年8月から研究を停止しており、現在のところ、予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
産前産後休暇および育児休業により、研究期間の1年延長を申請している。これにより、研究予定を1年繰り下げて、平成28年度までの予定とする。 平成27年度には、昨年度に中断されていた標本の免疫染色を引き続き行い、神経線維数を確認する。移植後については、症例により時間経過を追えるものと生検が1回のみのものがあるが、複数回生検されている症例では経時的変化もみることで、より神経線維と代謝との関連が明らかになると考えられる。また、それぞれの症例の血糖、ヘモグロビンA1c、コレステロール、中性脂肪などの臨床検査値を収集し、疾患ごとの傾向や神経線維数との関連を評価する。 平成28年度には、東北大学に導入されているイメージング質量顕微鏡を用いた研究を行う。肝組織内の脂肪量やグリコーゲン量などを分析することで、肝内の代謝の状態を知ることができる。更に臨床検査値との相関を確認し、疾患や神経線維数との関係性を評価する。肝内の代謝の状態と神経線維の状態を照らし合わせることで、脳からの自律神経系を介したネットワークに肝臓がいかに参画するかについて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の妊娠により、平成26年度中の学会に研究者本人が参加することができず、旅費の支出が無くなった。また、産前産後休暇および育児休暇により、平成26年途中から研究を中断しており、予定していた研究を翌年度以降に繰り下げることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
産前産後休暇および育児休暇に伴う期間延長により、研究期間を1年延長した。よって、当初の計画から1年ずつ繰り下げて使用する予定である。
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