研究課題
ミトコンドリアは細胞の生存に必須な細胞内小器官であり、特に細胞内に取り込まれた鉄が正しくミトコンドリアに運ばれ、鉄-硫黄クラスタやヘムの合成が行われることが重要である。細胞に取り込まれた鉄のミトコンドリアまでの動態の詳細はこれまでに明らかにされていないが、さまざまな疾患の発症原因となるミトコンドリア機能異常において鉄の動態異常が何らかの関わりがあると考えられている。本計画ではミトコンドリアを中心とした細胞内鉄動態の分子メカニズムを明らかにすることで、細胞内環境にとっての鉄代謝・動態の生理的意義を明らかにすることを目標とした。・当該年度(H26)の研究概要と実績報告新たに研究代表者が見出しているミトコンドリア鉄代謝異常と、ミトコンドリア機能維持に重要な細胞内分解系オートファジーの関係性を、オートファジー欠損マウスモデルを用いて解析した。具体的には組織特異的オートファジー欠損マウスにおけるミトコンドリア機能異常と鉄動態(維持、代謝、局在)を組織学的、細胞生物学的、生化学的手法により検討した。結果、ミトコンドリアの機能異常のごく初期段階にミトコンドリアはその内部に維持されるべき鉄量を減らし、結果ヘム合成や鉄含有タンパク質が重要な機能を担う呼吸鎖複合体の活性などが減少していることを明らかにした。これらの結果は、ミトコンドリアの機能異常と鉄動態異常の関係性を示唆し、さらに培養細胞レベルでの検討からも、ミトコンドリアにおける鉄動態異常は、機能維持の初期崩壊段階において認められることを確認した。これらの研究結果は、各学会にて口頭、ポスターなどで報告した。
2: おおむね順調に進展している
研究概要に挙げた成果に基づき、研究計画初年度(H26 )の研究計画に沿った研究達成であると考えられ、その成果については年度内の種々の学会において発表(一部招待講演含む)した。また、研究計画では自身が所有するミトコンドリア機能異常モデル(マウス・培養細胞におけるオートファジー欠損モデル)を用いた検討だけではなく、ミトコンドリア機能障害が他の疾患モデルでも認められるかについても検討を予定していた。それについて所属部局(山形大学医学部)における共同研究としていくつかのヒト疾患について検討を行った。研究成果としては新規ミトコンドリア機能異常ニューロパチーの責任遺伝子を報告し、その中で患者から採取したリンパ球細胞におけるミトコンドリア機能異常を検証し、本研究計画に関わる重要な知見を得ることができた。次年度における研究計画にこれら疾患モデル(患者由来試料)の検討も加える予定である。
初年度の成果を受け、計画最終年度であるH27度はミトコンドリア機能異常を引き起こすさまざまな生理的、細胞生物学的状況(モデルマウス、培養細胞への化学的ストレスなど)を用意し、ミトコンドリアが機能異常の初期段階に陥った時点からの機能回復法を検討する。またミトコンドリア機能異常マーカーとしてのミトコンドリア鉄動態(維持、代謝、局在)を感度良くモニターする技術開発のために、組織や細胞から分離精製したミトコンドリアを試験管内で機能測定し、かつさまざまな機能回復とその評価を行う手法を検討する。これらの計画から得られる知見を、今後ミトコンドリア関連疾患における早期検出、あるいは早期治療法へと展開する。
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http://tanaka.yu-med-tenure.com