パーキンソン病(PD)のバイオマーカーの一つとしてαシヌクレイン(αS)が検討されている。リン酸化αS(p-αS)がPD患者の血漿、髄液で上昇することがELISAで報告されているが、正常者との重なりが大きく、PDを正常者や他のパーキンソン症候群から高感度に鑑別することは出来ていない。 本研究課題では従来ELISAでは検出できなかった非リン酸化αS(non-p-αS)を検出し、p-αSとnon-p-αSの量比を検討することによって診断能力が向上するか検討することを目的とした。当初、Phos-tag SDS-PAGEを用いてp-αSとnon-p-αSを分離することを予定していたが、Phos-tag SDS-PAGEでp-αSとnon-p-αSを分離することは出来なかった。その為、p-αS、non-p-αS、総αSをそれぞれ認識する抗体を免疫沈降で検討した。 平成28年度はこれらの抗体を用いて、患者検体でp-αS、non-p-αS、総αS量をウェスタンブロットで検討した。血漿および脳脊髄液ではp-αSは微量で定量することが困難であったため、赤血球中αSで検討した。PD患者15例および疾患コントロール13例の赤血球を用いた。赤血球中αSのうち総αSはPD患者群、疾患コントロール群で有意差はなかった(p=0.843)。p-αSはPD患者で疾患コントロールに比べ低値であった(p=0.014)。p-αS/non-p-αS比はPD患者で有意に低値であった(p=0.001)。p-αS/総αS比もPD患者で有意に低値であった(p=0.009)。この中で、p-αS/non-p-αS比が、PD患者と疾患コントロール群で差が大きかった。赤血球中p-αSの減少はパーキンソン病の病態と関連する可能性が示唆された。今後は検体数を多くして、再現性が得られるか確認する予定である。
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