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2016 年度 実績報告書

明治後期の日本外地における漢詩文活動とその思想の実証的研究――籾山衣洲を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 26870069
研究機関山形大学

研究代表者

許 時嘉  山形大学, 人文学部, 准教授 (10709158)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード無用論 / 漢詩文 / 植民地台湾 / 成島柳北 / 籾山衣洲 / 寺門静軒
研究実績の概要

本年度は、幕末維新期から漢文学者の無用論の系譜を明らかにし、滞台期間中の籾山衣洲の詩文に反映された「無用論」の思想の位相を分析した。
幕末以来、寺門静軒や成島柳北の漢文戯作における無用者論の言説は、常に儒学者の不遇意識や世相への反発精神と深く関わっていると研究者は指摘している。前近代的な知識人と彼らの文化的営みが激しい時代の変動のなかで次第に価値を失ったことにより、常に「無用のもの」というレッテルを突きつけられていたにもかかわらず、本人たちはその評価に甘んじることなく、あえて「無用」というイロニーを生かして世の中に何らかの形で、たとえばプライドの裏返しの韜晦や内心の自信の表現など、時の政府と対峙して自分の確固たる生き方を示していくのである。
この漢文戯作に現れた無用者論の基調が衣洲にも継承された。しかし、滞台時の籾山衣洲の無用論は、寺門静軒や成島柳北など漢文繁昌記の伝統を意識したうえで展開されたものとはいえ、外部世界の不条理への鋭い観察と自己自身への反省をともに内包していた静軒や柳北の風刺文と異なり、「有用」世界と「無用」世界との緊張関係を把握せず、通俗的な道徳論に留まることが明らかになった。そして、同時代の花鳥風月的な竹枝詞とも異なり、衣洲の竹枝詞は隠喩を戯れとして活用し、目前の風景との二重視に終始している。その「戯れ」という挑戦は本来の風刺精神を失って、戯文のレベルに停滞し、時に植民地権力構造に「協力」する形で綴られていることが分かった。近代国民国家及び植民地統治構造という特別な時-空間の中に、衣洲の「無用」論は、従来の静軒・柳北のそれに比べるとズレを生じたし、漢文戯作の「風刺」と「戯れ」という特徴が衣洲の作品においても前人たちと随分異なる形で形象化されているのである。
本年度の研究業績は、図書出版(2件)と会議口頭発表(1件)である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 明治期無用者論的延続與断裂――以成島柳北與籾山衣洲為例2016

    • 著者名/発表者名
      許時嘉
    • 学会等名
      「文化・文学:歴史與記憶」シンポジウム
    • 発表場所
      大連理工大学(中国大連市)
    • 年月日
      2016-06-25 – 2016-06-25
    • 国際学会
  • [図書] 『断裂し重なりあう経験――「帝国」日本といくつもの「戦後」』(出版予定)2017

    • 著者名/発表者名
      杉原達〔編〕許時嘉ほか共著、
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      青弓社
  • [図書] 『籾山衣洲在台日記1898-1904年』2016

    • 著者名/発表者名
      許時嘉・朴澤好美
    • 総ページ数
      625
    • 出版者
      中央研究院台湾史研究所

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公開日: 2018-01-16  

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