研究課題
本研究の目的は、放射能汚染を受けた地域の稲作再生に向けて、生産環境の多様性に即した極め細かな営農指導と、将来的な低減資材の削減を視野に入れて、持続可能なイネのセシウム低減対策を提案することである。セシウム供給源を、土壌・水・大気の3つに分類し、それぞれの供給動態を検討した。営農再開した地域では、田に入る陸水中の放射性セシウム濃度は十分に低下しており、放射性物質の再拡散・大気降下が生じぬ限り、現状では基準値超過させる汚染要因とはならないと考察した。また2018年3月まで南相馬市内2地点で大気中の放射性セシウム濃度のモニタリングを実施したが、いずれも不検出であり、当該期間中は南相馬市では基準値超過させる汚染はなかったと結論づけた。そして放射性物質の再拡散・大気降下が生じた場合に、基準値超過する怖れのある水田の特定と、流通を一時停止するスキームを検討した。福島県産のコメは、3年連続で基準値超過するコメが確認されていないが、検出された放射性セシウムは主に土壌に由来する。本研究では、伊達市小国地区の試験栽培、全量全袋検査の実績を踏まえ、阿武隈山地を代表する花崗岩と霊山層を代表する玄武岩に着目し、放射性セシウムリスクを検討した。加えて土壌の多様性を考慮するため県内600箇所の土壌で短期間で成長するソバスプラウトに放射性セシウムを吸わせるバイオアッセイを行い、地質の違いによるリスク評価をした。イネとソバではセシウム吸収機構は異なるが、ソバではイネが吸収しないセシウムも吸収するため、リスクを幅広く抽出できることも明らかとなった。そして地質の違いによるリスク評価の考え方を示し、カリウム肥料による低減対策や、全量全袋検査が不可欠な生産条件を考察し、持続可能な放射能汚染対策の構築にむけた提言とした。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 図書 (1件)
地域創造
巻: 29(1) ページ: 46-56
巻: 29(1) ページ: 26-45