研究課題/領域番号 |
26870072
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊池 由葵子 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (90600700)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 自閉症スペクトラム / 社会的認知 / 顔 / 注意 |
研究実績の概要 |
定型発達者は、他者の顔や視線など社会的なものに対する選好が強い。一方、自閉症スペクトラム障害は、対人コミュニケーションの困難を主徴とし、他者に対する選好が定型発達者にくらべると弱い。本研究では、自閉症スペクトラム者を対象に、アイコンタクトなど他者への注意を強めることによって、社会的認知能力が向上するかどうか検討している。 自閉症スペクトラム児は視線追従の発達に遅れがあり、他者の視線の先のモノに対して注意が留まらないことが報告されている。これまで関わった研究により、写真や動画による刺激呈示ではなく、実際の人物をライブで呈示すると、自閉症スペクトラム児においても他者の視線の先のモノを長く注視することが分かった。 このライブ呈示の効果を本研究でも取り入れ、これまで自閉症スペクトラム者では発達に遅れがあり、定型発達者で見られるような特徴が見られないとされていた社会的認知課題について再検討を行った。今年度は、統制条件としてビデオ呈示による誤信念課題を実施し、先行研究の追試を行った。定型発達者では、ビデオ中の登場人物の誤った信念にもとづいて予期的な注視パターンが生じるのに対し、自閉症スペクトラム者では、そのような予期的な注視パターンが見られないことが報告されている。追試の結果、先行研究と同様に、定型発達者はビデオ中の登場人物の誤信念にもとづいてその行動を予期していたのに対し、自閉症スペクトラム者ではそのような予期的な注視行動は見られなかった。今後、ライブ呈示の誤信念課題とあわせて、社会的な注意の影響について検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験補助者などの確保が難しく、解析や論文執筆が遅れているため。
|
今後の研究の推進方策 |
自閉症スペクトラム児を対象に、模倣に対するアイコンタクトの影響について解析を終え、論文を執筆する。また、自閉症スペクトラム青年を対象に、白黒反転顔画像を用いた顔からの注意の解放について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験実施や解析・論文執筆が遅れているため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
翌年度の研究費とあわせて実験参加者や実験補助者への謝金や実験に関わる物品費、通信費などに使用する予定である。また、国際学会等での発表や研究打ち合わせに際し、旅費も使用する予定である。
|