研究課題/領域番号 |
26870076
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
津川 翔 筑波大学, システム情報系, 助教 (40632732)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソーシャルウェブ / ビッグデータ / ソーシャルメディアマイニング / うつ |
研究実績の概要 |
本研究では、人が日常的に利用するソーシャルメディアにおけるユーザの活動履歴から、ユーザのうつ傾向を推定するモデルを構築することを目的としている。この目的を達成するために、(1)モデル構築のための教師データの収集、(2)機械学習によるうつ傾向推定モデルの構築、(3)うつ傾向推定システムの実装と評価、の3つの研究課題を定めて、研究を遂行する計画を立てている。 平成26年度は、研究課題 (1) については、教師データ収集のためのウェブサイトを運用し、のべ 214 ユーザ分の教師データを収集した。研究課題(2) については、研究課題(1)で収集した教師データを用いて、Support Vector Machine による教師あり機械学習で、ユーザのうつ傾向を推定するモデルを構築した。評価実験の結果、構築したモデルを用いて約70%の精度で、ユーザのうつ傾向の有無を判定できることを示した。研究課題(3) については、平成27年度に実施する計画である。 世界的に問題となっているうつ病の治療のためには、まず個人のうつ傾向を把握することが重要であり、本研究の成果はうつ病の治療に貢献するものと期待される。ここまでの研究成果は、本分野における最も重要な会議の一つである ACM CHI2015 にフルペーパで採択が決定している。このことは、本研究の成果が学会において高く評価されていることを示している。 なお、研究課題(2)を遂行するにあたって、ソーシャルメディアにおけるユーザの活動履歴から、重要な特徴量を抽出するための分析手法を検討する必要があった。この分析手法に関する付随的な成果についても、研究発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題(1)教師データの収集については、計画通り実施することができた。当初計画において収集する予定のデータ量よりも、実際に収集できたデータ量は少なかったが、収集できたデータだけでも、うつ傾向を推定するモデルの構築は可能であった。そのため、本研究計画全体としては、順調に進めることが可能であった。 研究課題(2)機械学習によるうつ傾向推定モデルの構築、についても、既に 70%程度の推定精度のモデルを構築することができており、おおむね順調である。ただし、研究計画において研究期間内に達成する目標の精度には、まだ到達できていない。そのため、平成27年度においては、システムの実装および評価の際に、モデルの改良も合わせて実施する予定である。 研究課題 (3) うつ傾向推定システムの実装と評価については、予定通り平成27年度に実施できる見込みである。 研究成果の公表についても、トップカンファレンスへの採択が決定しており、順調であると考えている。平成27年度はさらに論文誌にも投稿し、広く学会に対して研究成果の公表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、研究課題 (2) で構築したモデルを利用し、ソーシャルメディアにおけるユーザの活動履歴から、ユーザのうつ傾向を推定するシステムの構築と評価を行う。 定量的な評価として、モデルで推定したうつ傾向とアンケートから得られたうつ傾向を比較し、モデルの精度を調査する。本研究で構築するシステムは医師やうつ病患者自身が現在の状態を把握するのに用いることを想定しているため、ユーザの現在の状態を捉えることができるかどうかを評価することが重要になる。そのため、研究課題 (1) で収集したデータに加えて、時系列のユーザのうつ傾向のデータを収集し、評価を行う。このようなデータを効率的に収集するために、クラウドソーシングを利用する予定である。 最後に本研究では、モデルの有効性の定性的な評価として、筑波大学病院の医師の協力のもと、構築したモデルを実際に医療の現場において、どのように利用できるかを明らかにする。構築したシステムを医療の現場で利用してもらい、有効性や問題点を明らかにする。 なお、推定モデルの改良についても継続的に実施していく。平成 27 年度に実施する評価のために新たに収集する予定のデータを教師データに加えることで、ある程度の精度向上を見込んでいる。さらに、Support Vector Machine 以外の機械学習手法の有効性を調査し、深層学習などのより高い精度が期待できる学習手法の適用も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の計算機が当初予定よりも、安価に調達できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の残額は、平成27年度分予算と合わせて、論文執筆に係る英文校正や論文の投稿料として使用する計画である。
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