研究課題
ヒト組織やヒト遺伝子が導入されたマウス(ヒト化マウス)は、ヒト細胞やヒト遺伝子の機能をマウス個体内で詳細に解析できるだけでなく、重要なヒト疾患モデルマウスとなり得るため、多くの期待を集めている。なかでも重度複合免疫不全を呈するNOGマウスはヒトの組織を受け入れるため、ヒト化マウスの作製のために欠かすことのできない生物資源である。このNOGマウスに、ヒト造血幹細胞を移植したヒト化マウスはヒト免疫システムをマウス体内で再現できる免疫系ヒト化マウスとして有用である。しかしながら、ヒト-マウス間のMHCクラスIIの差異により、抗体を介した液性免疫反応をこの免疫系ヒト化マウスで起こすことは困難である。そこで、我々はCRISPR/Cas9 システムを用いて、各個人のヒトMHCクラスII遺伝子をノックインしたNOGマウスの作製に挑戦する。本年は、CRISPR/Cas9システムによるノックインマウス作製方法の確立を行った。申請者らはまず、一般的に使用されているスタンダード系統であるC57BL/6マウスの受精卵を用いて CRISPR/Cas9システムによるノックインを試みた。 その結果、2本鎖DNAをドナーとする際には、ゲノムとの相同領域部位およそ1500塩基対とすれば、約5000塩基対のDNA断片を目的の遺伝箇所にノックインできることが明らかとなった。次に申請者はNOGマウスと非常によく似た遺伝背景を有するNOD/SCIDマウスを用いて、体外受精による受精卵の獲得法の確立を行った。その結果、10匹のNOD/SCIDマウスより100個を超える受精卵を得る方法を確立した。この方法で得た受精卵を用いてCRISPR/Cas9によるノックインに挑戦したが、ノックインベクターのランダムなゲノムへの挿入は認められたが、目的部位にノックインした個体を得ることは出来なかった。
2: おおむね順調に進展している
C57BL/6においては、受精卵でのノックイン方法の確立に成功し、NOD/SCIDにおいは、マイクロインジェクションに利用可能な胚を体外受精で得る方法を確立することができたため。
ノックイン効率を上げることが可能な小分子等を利用することでNOD/SCIDやNOGマウスの受精卵でのノックイン方法を確立し、ヒトのMHCクラスII遺伝子を保持するマウスを作製する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Mammalian Genome
巻: 25 ページ: 327-334
10.1007/s00335-014-9524-0.