研究実績の概要 |
本年度は4回、のべ1カ月半にわたり、ウズベキスタン共和国中央国立文書館、ロシア国立歴史文書館、同国公共図書館において、ロシア帝国の河川転流計画(アムダリヤのカスピ海への転流計画)に関する文書史料を閲覧、複写した。またロシア科学アカデミー東洋写本研究所では、1870年代の村落調査の記録など中央アジア現地社会(ホラズム地方)の水利慣行に関する史料を閲覧、筆写した。 調査時に収集した史料の分析を進めるとともに、1890年代ロシア帝国の地方統治機関・トルキスタン総督府による河川転流計画の追求がもたらした運河建設の現地社会への影響を論じた英語論文(“Povorot and the Khanate of Khiva: a new canal and the birth of ethnic conflict in the Khorazm oasis, 1870s-1890s,” Central Asian Survey, 33-2, pp. 232-245)を刊行し、また水利慣行に関する史料の紹介、および土地・水利制度と徴税・軍事制度との具体的な関係を検討する内容の国際学会報告を行った。 これらの研究成果を通して、ロシア帝国の地方統治機関の開発計画と現地社会の水利慣行との齟齬がより具体的に明らかになったが、同帝国の中央政府の開発計画立案過程およびそれに対する地方統治機関内での議論の展開については次年度以降詳細な考察が必要となる。なお、本研究課題およびその基盤となった先行の研究課題(「ロシア進出前後の中央アジア社会に関する歴史地域学の試み」)の成果に対し、第4回地域研究コンソーシアム賞登竜賞および平成26年度筑波大学若手教員奨励賞を受賞した。
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