本年度は、本研究結果がきっかけとなり、つくば市の高齢者福祉計画策定委員会内に立ち上げた緊急ショートステイ利用促進のための専門部会において、空床お知らせカレンダーを作成し、施設側の入力とケアマネが閲覧をする実証実験を行った。その後のアンケート調査では、入力側、閲覧側共に好意的な回答が多く、28年度以降は市が中心となり本格稼働に向けた調整を行うこととなった。本実験の話し合い過程や、事業の本格稼働に向けて、入力方法や受け入れ可否、利用者情報有無等の問題点を整理することもでき、研究が現場や市に働きかけ、産学官で一つの事業を作り上げる好事例となった。 大都市では、緊急ショートステイ事業として常に空床を確保し、本研究の調査では2000万円近い予算を計上している自治体もあった。つくば市は空床はあるが空き施設が不明という特性があり、空床お知らせカレンダーで利用促進できることがわかり、緊急ショートステイ事業にかかる追加の費用は、昨年度行った試算に大きく影響するものではなかった。これら緊急ショートステイ利用促進事業について、公衆衛生活動として報告を執筆中である。 また、厚生労働省に申請し許可を得て介護レセプトおよび国民生活基礎調査の個票を分析した。介護レセプト分析からは、ショートステイ利用は施設入所を促進するが、軽介護度(要介護1・2)では、ショートステイ利用者は施設入所までの期間が未利用者より長いことがわかり、この知見の英文論文を執筆中である。さらに、高齢者同様ショートステイのニーズが高い障害児介護において、国民生活基礎調査の分析から、障害児介護をする親は44%に心理的ストレスがあり、特に活動が制限される、低収入、ソーシャルサポートが少ない層等で多くみられた。 本研究から、家族介護者の実態把握を詳細に行い、ショートステイを始めとした具体的支援に結び付けていくことの重要性を明らかにした。
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