研究課題/領域番号 |
26870093
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石飛 宏和 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00708406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 直接エタノール燃料電池 / 電極触媒 / 金属間化合物 / カーボンナノファイバー / 複合触媒 / 触媒活性 |
研究実績の概要 |
直接エタノール燃料電池(DEFC)のアノード反応速度の促進を目的とした金属間化合物―金属酸化物―炭素の複合触媒の開発を進め,燃料電池単セルの発電試験を行った.前年度と比べて調製条件を最適化することにより複合触媒(白金鉛担持酸化チタン包埋カーボンナノファイバー(PtPb/TECNF))を高活性化した. 電気化学測定により,PtPb/TECNFおよびPt/C(市販触媒)について0.5 Mエタノールの酸化活性を評価した.その結果,0.70 V vs. RHEにおけるPtPb/TECNFの質量活性はPt/Cと比べ4倍高い活性を示した.この結果は昨年度までに当グループが調製したPtPb/TECNFの活性と比較しても比較的に高活性である. 平成28年度に調製したPtPb/TECNFは白金鉛による被毒抑制効果と酸化チタンによるOH供給効果の両方が発揮されるナノ複合構造となり,高い活性を示したと考えられる.前駆体の構造および還元方法を適切に選択することにより,「白金鉛粒子のサイズ」や「白金鉛と酸化チタンの接触状況」を適当な状態に制御できる点が示唆された.調製方法を最適化したPtPb/TECNFをアノードに実装した燃料電池を作製して発電試験を行い,市販触媒(Pt/C)よりも高出力になる点を確認した.一方で,今回作製した電池は触媒活性から予想される出力には至らず,触媒活性を活かす触媒層の構築が必要である.今後はPtPb/TECNFに適した触媒層の設計指針を明らかにし,活性化過電圧と濃度過電圧の低減をはかり,さらなる電池の高出力化を目指す. 本研究を進める中で,PtPb/TECNFは従来触媒と比べて長期安定性が低い点が明らかになった.触媒耐久性は実用化に向けて重要であるので,長期的に活性を持続できる触媒設計について研究を進める必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度については,前年度に引き続き「複合触媒(金属間化合物/酸化チタン/カーボンナノファイバー)の調製」および「複合触媒の活性評価」,「複合触媒を実装した電池による発電試験」を行った. 「複合触媒の調製」については前駆体の選択や還元条件について最適化を行い,高活性な複合触媒(PtPb/TECNF)を調製した.そのため,複合触媒の調製方法を確立できたと考える.PtPb/TECNFをアノード触媒に用いた電池が市販触媒をアノード触媒に用いた電池と比べて高い出力を示すことを実証し,当初の主要な目的を達成した.PtPb/TECNFの触媒活性を考えると,電池のさらなる高出力化は可能と予想される.将来的には高活性触媒のキャラクタリゼーションをさらに進め,活性向上について考察を深める必要がある. また,前年度に見出した複合担体(シリカ/カーボンナノファイバー)について金属触媒として白金-スズ(PtSn)を用いることにより高活性なエタノール電極酸化触媒を調製した.白金鉛担持酸化チタン包埋カーボンナノファイバー(PtPb/TECNF)の成果と関連させながら,単セルを作製した.この複合触媒(PtSn/シリカ/カーボンナノファイバー)をアノード触媒として用いることにより,市販触媒と比べて高出力な電池となる点を見出した. 以上の研究実施状況を勘案し,達成度については「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の検討で明らかになった課題を踏まえて,電極構造と電池出力の関係について知見を得る.PtPb/TECNFの高い活性を発揮させる触媒層の構築方法について検討する.液体供給燃料電池として物質移動・反応を促進するためにファイバー触媒層の構造と電池出力の関係を調べる.触媒層を構築するにあたり,ファイバー長さ・スラリー調製・塗布・乾燥の条件により触媒層の空隙率・細孔径・アイオノマー重量分率といった条件を制御する.また,燃料極における生成物分布の測定を行うことにより,金属間化合物(PtPb)の規則的な幾何学構造がエタノールの酸化反応の生成物分布にどう影響するかを評価する.平成29年度に以上の研究を行うために,必要最小限の金額の繰り越しを行った. また,長期的な課題としてPtPb/TECNFの活性安定性の向上が求められる.定電位での電気化学測定や定電圧での単セル発電試験を行い,測定後の試料の分析などを組み合わせることにより,シンタリング・被毒・気孔生成のうち活性低下の主要因を明らかにする. 以上の取り組みをまとめ,直接エタノール燃料電池の触媒・触媒層の設計指針を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究の推進方策で述べたとおり,平成29年度に「PtPb/TECNFの高い活性を発揮させる触媒層の構築方法」について詳細に検討する必要が生じた.そのため,当初予算の一部(必要最小限)を繰り越し,燃料電池単セルの作製費用とする.平成28年度の研究については,研究グループ内で装置・物品を効率よく使用したため,支障はなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
「PtPb/TECNFの高い活性を発揮させる触媒層の構築方法」を検討するために,燃料電池単セルの作製費用として充当する.触媒調製・膜電極接合体の構成部材の準備・高圧ガス等の費用として使用する.費用の一部は運営費交付金を活用して,支障なく研究を推進する.
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