研究課題
マラリアの症状として腹痛、下痢、嘔吐といった消化器症状が高頻度に認められるにも関わらず、マラリアの腸管への影響はほとんど研究されていない。本研究ではマラリア原虫感染における宿主病原体相互作用への腸内細菌の影響を解明することを目的とした。昨年度までに、脳マラリアのモデルであるネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株を感染させたC57BL/6(B6)マウスにおいて、小腸病態が生じているとともに腸内細菌叢が劇的に変化して腸内細菌バランス失調(dysbiosis)を起こしていることを明らかにした。16S rRNA遺伝子を用いた次世代シーケンサーによる網羅的な菌叢解析から、菌叢の変化は脳症状発症前から始まっており、また幾つかの腸内細菌では、原虫の赤血球への寄生率(Parasitemia)、もしくは脳マラリアの重症度との相関が認められた。このことから脳マラリアを含むマラリアの病態への腸内細菌の関与が示唆された。最終年度は、ヒト熱帯熱マラリア患者において検証を行うため、マラリア流行国であるウガンダ国の病院において熱帯熱マラリア患者から消化器症状のアンケートを行うとともに、感染時と回復時に糞便を採取して、16S rRNA 遺伝子を用いた菌叢解析を行った。その結果、患者における腸内細菌叢は、健常者とは顕著に異なっており、重症患者では、嘔吐や下痢といった消化器症状やParasitemiaと腸内細菌叢パターンとの間に相関が認められた。本研究により熱帯熱マラリアおよびネズミマラリア感染による腸内細菌叢の変化を明らかにするとともに、腸内細菌のマラリア病態への関与の可能性を示すことができた。今後の更なる解析によりマラリアと腸内細菌の相互作用の詳細が明らかになれば、消化器症状の軽減・防御免疫の解明など、マラリアコントロールの新たな戦略を提案できる可能性が広がる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Malar J
巻: 15(1) ページ: 499
10.1186/s12936-016-1548-3
http://www.med.gunma-u.ac.jp/med-organization/envmed/envmed-defense/157.html/