本研究課題で構築したデトネーション駆動型高速ガス銃を用いて、高速飛行体開始による燃焼器作動を行った。燃焼器内の現象をシュリーレン光学系および高速度カメラを用いた高時間分解能の可視化手法で観測した結果、以下のことが明らかになった。 (1)燃料(水素、アセチレン、エチレン)・酸素・希釈ガス(アルゴン、窒素)を一様に混合させた作動流体を用いて、初期圧力(25~150 kPaA)および飛行体マッハ数(3~8)を広範囲に変化させて燃焼実験を行った。その結果、飛行体周りで着火された燃焼波面が時間的に振動する振動燃焼が広範囲の条件で観測された。振動燃焼が発生し得る物理的な条件を明らかにするため、飛行体周りに形成される衝撃波の背後において、誘導反応距離および発熱反応の急峻さを代表するパラメータを導入した。これにより、誘導反応距離と飛行体直径の比、および発熱速度(比エンタルピーの上昇割合)と流れ場の特性時間の比、という二つの無次元パラメータによって振動燃焼の発生条件が整理できる可能性を示した。加えて、飛行体マッハ数が3程度においても燃焼波を着火し得ることが観測された。この場合には、飛行体近傍のごく薄い領域に燃焼波面が形成され、燃焼波面は飛行体後方の流れ場の影響を受けることが分かった。 (2)燃焼器内で燃料濃度に勾配のある非一様な作動流体を用いて、濃度勾配の大きさおよび総括当量比を変化させて燃焼実験を行った。その結果、飛行体によってデトネーション波を開始し得るかどうかについては、飛行体近傍の燃料濃度が支配的であることが分かった。飛行体近傍でデトネーション波が開始されれば、その周囲である程度大きな濃度勾配があったとしてもデトネーション波を維持し得ることが示唆された。この場合、飛行体周りの斜めデトネーション波は、一様な作動流体中で見られる軸対称形状から大きく湾曲した状態で維持されることが分かった。
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