研究課題
1. 恥骨結合面を用いた年齢推定現在、恥骨を用いた年齢推定法で広く用いられているのは、恥骨結合面の形態を肉眼的に観察するSuchey-Brooks法である。これは恥骨結合面の凹凸等の形態を観察して評価するものであり、これまで定量的な評価法については定まった方法がない。今回、CT画像を用いて、冠状断及び軸位断画像で恥骨結合面を構成する要素をCT画面上で計測し、加齢との相関関係を調査した。加齢に従って、結合面での恥骨の形態が変化することが示された。また、恥骨結合における軟部組織の厚さについても、加齢に従って減少する傾向が示された。これらの結果を英文論文として発表した。従来法と比較して優れた結果は得られなかったものの、定量的な方法で恥骨結合面を評価した報告は今までになく、有意義であったと思われる。また、観察する過程において、高齢者では恥骨結合の軟骨内に石灰化が認められる場合があることも分かった。中年以降の年齢推定は一般に困難であるとされているが、軟部組織の石灰化の更なる観察によって、比較的高齢者の年齢推定に応用可能性があることも示唆された。2.Defense POW/MIA Accounting Agency (POW; Prisonar of War, MIA; Missing in Action)視察米軍における戦死者身元究明施設であるDPAAは、主に第二次世界大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争における戦死者を扱っており、世界でも有数の現代人骨の鑑定機関である。現代日本人の身元識別を行う我々法医学と目的が非常に近い。今回、DPAAを視察し、死亡時年齢の推定、性別推定などについて研修を行った。また、現代日本で扱うことが少ないアフリカ系、コーカソイド系の鑑定についても研修を行った。
2: おおむね順調に進展している
恥骨結合を用いての年齢推定については論文を公表することができた。おおむね順調に進展していると考えられる。
口蓋縫合での年齢推定を予定しており、これを推進したい。また、長管骨の画像データを用いた個人識別の手法についても検討していきたい。
今年度は主に画像処理の環境を作るために研究費を使用した。画像処理専用の端末と、サブモニターの設置である。計測後の画像を処理するソフトウェアの整備がまだできていないため、その分の予算が次年度使用額として計上されている。
画像、統計学的データを処理するための端末やソフトウェアの整備に充てる計画である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int J Legal Med.
巻: 128 ページ: 667-673
10.1007/s00414-014-1010-4.