研究課題/領域番号 |
26870098
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
廣瀬 裕二 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60400991)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 可逆ゲル / ダイラタント流動 / 路面 / ポリエチレングリコール / ナノ粒子 / シリカ / 分散系 |
研究実績の概要 |
振盪することで流動性が失われゲル化し、その後静置することで流動性が元に戻る「可逆ゲル」の性質を示すナノシリカ/ポリエチレングリコール(PEG)水溶液分散系について、歩道路面への適用に向けて以下に示した様々な基礎実験を行い、データを得た。データを得る際には主に二重円筒型レオメーターを用いて、ゲル化前後の粘度およびゲル化の際に粘度が急上昇(粘度ジャンプ)するせん断速度の値から評価を行った。 1 この試料に微量の塩を加えるとより低いせん断速度でゲル化するが、塩を加えたものと加えないもので同様の流動性を有するようPEGの量を調整したものについて、一旦ゲル化したものの流動性が回復する時間を測定したところ、塩を加えたものの方がより速く流動性が回復することが分かった。 2 発泡スチロールのリサイクル利用を目指してポリスチレン(PS)のマイクロ粒子を界面活性剤とともに加え、ゲル化前にもある程度の粘度を持たせることを試みた。その結果ゲル化後の流動性はあまり変わらないが、ゲル化前の粘度を上昇させることが可能であった。 3 可逆ゲル試料を振盪機によって長期に渡って振盪させ、ゲル状態を保つようにしたところ振盪を止めても流動性が戻りにくくなった。特に塩を加えたものでは1年ほど置くとほとんど流動性が戻らなくなり、より顕著にこの作用が現れた。このようにゲルとなって元に戻らない試料を60℃まで加熱しても流動性は回復しなかった。 4 ゲル化前後の粒径分布を光散乱式粒度分布計により測定したところ、流動性がほぼ元に戻る段階で平均粒径が低下する様子が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノシリカ粒子をはじめ多量の材料を本補助金により購入することができたため、様々な測定を行い実用化に向けた多くの基礎データを得ることができた。平成26年度計画のうち、リサイクル材料(マイクロ粒子)を用いた場合の性能評価はほぼ予定の実験を終了し、プラスチックリサイクル化学研究会にて発表を実施した。このほか長期耐久性およびゲル化後に流動性が元に戻るまでの挙動に関しては有用なデータが得られた。これらの基礎データは平成27年度の実用化を目指す実験に際して、歩道路面舗装を施工するにあたって大量の試料を調整、使用する際にどのような塑性の材料を用いるかの指針とする予定である。 一方で粒度分布計によるゲル化発生機構の解明はゲル化時および流動性回復時に定量的なデータの再現性が現れず、有益なデータはあまり得られなかったものの、平均粒径がゲル化時に大きくなるという定性的な結果は得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究により、塩およびシリカの組成比によって可逆ゲルの流動性や元に戻るまでの時間を制御できることが分かった。一方で長期安定性については実用化に際し問題が見つかったものの、将来の解決を期待してウッドチップ舗装路に適用した際の特性評価および舗装路の評価試験における測定法の影響を当初予定の通り実施する。その際に使用する可逆ゲル材料には平成26年度の研究内容を踏まえて、ナノシリカの使用量を削減できかつ流動性が元に戻りやすい塩を添加したものを中心に用いる。 このほか粒度分布計を用いた実験は組成を変更することで平成27年度も実験を実施する。余裕があれば温度を上昇させることによって耐久性の向上が出来るかも調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定の物品として挙げ、マイクロ粒子を混合した可逆ゲル実験で使用予定であったミックスローターは、早期に実験を開始するのに加え、同じ研究グループの、本研究とは異なる他のメンバーの研究にも使用することを狙って予定を変更し、他の予算により購入した。このマイクロ粒子を使用した実験は予定通り終了し、プラスチックリサイクル化学研究会での研究発表が出来た。また長期耐久性試験は当初計画の通り、平成25年度に購入済みであった振盪機を用いた。 また材料等の物品費も当初の購入予定よりも大幅に少なくなった。これは平成26年度に実施した基礎研究において多数の組成の材料で研究を行う予定であったものの、予定より少ない材料を用いた実験によっておおむね有用なデータを順調に得ることが出来たことから、ナノシリカをはじめとした材料・ガラス器具等の使用量を当初計画よりも減らすことが可能となったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に購入予定とした「すべり摩擦抵抗器」が高額であることから、昨年度に繰り越した予算は主にこの購入に充てる。実験室レベルでの舗装材試験のための材料、器具等必要な物品はおおむね予定通り購入する予定である。可逆ゲルを調整するための大きなガラス瓶等、一部必要な物品は既に購入を済ませており、平成26年度にも一部使用したものを洗浄して用いる。 国内外の研究発表も予定通り実施する予定で、平成27年5月の京都府宇治市での国内学会(日本レオロジー学会年会)、同年12月のハワイ・ホノルルでの国際会議(環太平洋国際科学会議、Pacifichem 2015)での発表申し込みを既に済ませている。この他の国内学会でも発表を予定している。このほか国内外の論文誌へ数報の論文を投稿する予定である。
|