研究課題/領域番号 |
26870102
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
槇野 陽介 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50725017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 死後MRI / 死後CT |
研究実績の概要 |
本研究は死後MRIによる死体検案への応用可能性を確認することを目的としている。平成26年度は、まず、車載式MRIをレンタルしている会社と連絡をとり、同車両の設置場所、研究の進め方、料金などを協議し、また大学の担当者とも話し、実現可能性を検討した。その結果、特殊大型車両を設置できる場所、設置方法などを各関係部署と連絡をとりあって、確認することができ、実現可能である段階にたどりついた。 ところが、次項に詳細に述べるごとく、車載式死後MRIの大学周囲道路における通行許可が得られなかったため、この許可の申請および、許可がおりるまでに時間がかかり、本年度中に具体的に研究を実施することができなかった。 平成26年度は、代わりに、死後CTの死体検案への応用の限界を示し、間接的に死後MRI導入の必要性を示唆する研究を行った。特に、本研究のメインとなる対象の一つである、致死的な頸髄損傷を死後CTで検出できるかどうかについて検討し、その結果、致死的頸髄損傷事例において、死後CTで検出できない事例が少なからず存在することを明らかにし、死後MRIの検討の必要性を明白化させた。この内容をまとめ、第3回国際法医画像学会(International society of forensic radiology and imaging)において報告した。また、American Journal of Roentogenology誌上で、原著論文として公表した。 死後CTではまた出血がよくわかる反面、血管の破綻部が見えないため、死因を見誤る危険性があり、血管の破綻部が判定しやすいと考えられる死後MRIが検視において有用である可能性がある。このことを腹部大動脈瘤破裂事例の解剖と死後CTの対比を行うことにより明らかにし、英語論文としてまとめ、Forensic Science International誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
MRIは単価、維持費ともに高級であり、病院などMRI業務で収入のあるわけではない大学の一研究施設である法医学教室のみでこれを維持するのは非常に困難である。必要に応じてレンタルできる車載式MRIにより検案を行うことがより安価で現実的である。この実現可能性の確認が本研究の主たる目的であるため、レンタル可能な車載式死後MRIを本研究のため、当教室のある千葉大学亥鼻キャンパスに設置すべく、検討を進めた。しかし、当該車両は特殊大型車両にあたり、設置場所、撮影予定敷地への入構方法などで様々な検討必要課題が認められた。精査の結果、ある特定の設置場所でしか撮影が行えないことがわかった。大学にその場での使用許可を申請し、受理された。平成26年度は、これらの過程に時間がかかり、なかなか研究が進められなかった。 さらに、大学からの施設使用許可が下りたのちも精査を進めたところ、当該車両は、撮影予定敷地周囲の一般道路を通行する許可が現状ではおりないことがわかった。大学周囲の道路が全て特殊大型車両の通行許可が認められていない道路であったからである。このため、国土交通省に通行許可を申請する必要があった。現在その許可がおりるのを待っている状態であり、この待機時間が長く、年度をまたいだため、年度内に研究が予定通りには進められなかった。 加えて、平成26年度にはまた研究責任者の急な人事異動があり、これにともなう事務的な仕事の処理などから、研究責任者が研究に対して従事する時間が一時的に減少していたことも、この車載式MRIレンタルに関する諸々の手続きにかけられる時間が短縮する要因となった。これもまた、研究の遅延の一因となった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のごとく、現状ではMRIを搭載してる特殊大型車両の大学付近道路の通行許可がおりていない状況であるが、今後国土交通省からの許可がおり次第、すみやかに研究に着手する予定である。許可は平成27年度の4月中におりる可能性が高いと聞いている。 研究責任者の仕事量も人事異動後約1年が経過したこと、事務的諸問題が解決してきていることなどにより、研究に対して利用可能な時間を増加させることが可能となっており、したがって、遅れている研究を進めることが可能であると考えられる。 平成27年度前半部で、平成26年度に予定されていた予備的な実験を行い、プロトコルを策定する。後半部で、実際の症例収集を検討する予定である。予備的実験では、まず動物などで検討を行い、n数を短時間で増やすなどの工夫を試みたい。後半部ではなるべく、解剖体数の多い曜日などに照準をあわせて、1回のレンタルで複数回の撮影が達成できる様にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究を行うにあたり、モバイルMRIをレンタルする必要があるが、これにあたって、様々な事務的諸問題が発生し、それに時間をとられ、実際にモバイルMRIをレンタルすることができなかった。次年度以降、このレンタルが可能になるため、その予算を次年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
国土交通省から許可がおり次第、車載式MRIのレンタルを開始する予定である。 もともとの計画でも1年目では、レンタルがうまくいくかどうか不明瞭であったため予備的実験を数回行う程度の計画であった。これは実質5日程度で行えるものである。これを次年度に、もともと次年度で施行する予定であった計画とともに実施することは時間的に問題がないことと考えられ、そのように実施し、残る使用額を使用していく予定である。
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