本研究では、「幼児期の生活リズムの確立に身体活動が寄与する」という仮説に対する科学的知見を得るために、2段階に分けて研究を実施した。 まず研究1では、実験手法を確立するために、成人で概日リズムを示す唾液中コルチゾールが幼児でも同様に生体マーカーとして適用できるか調査した。幼稚園に通園する年長児(幼児)17名と上記園児の父親で協力が得られた方(成人)9名を対象とした。平日の起床直後、登園ないし出社直後、昼食直前、夕食直前及び就寝直前の唾液を採取した。その結果、成人では、起床直後が、昼食直前、夕食直前及び就寝直前のそれぞれよりも高く、幼児では、起床直後が、登園直後、昼食直前、夕食直前及び就寝直前のそれぞれよりも高く、幼児でもほぼ同等の変動を示す可能性が示唆された。 研究2では、唾液中コルチゾールの概日リズムと身体活動量との関係性を調査した。幼児33名を対象にし、研究1と同様の方法で唾液を採取するとともに、データログ機能付きの身体活動量計を1週間装着し、身体活動を計時的に記録した。3 Mets以上の活動時間の平均を算出し、平均より高い数値の群を「高値群」と、低い数値の群を「低値群」と群分けし、比較検討した。その結果、高値群では、起床直後が、登園直後、昼食直前、夕食直前及び就寝直前のそれぞれよりも高かった。一方で、低値群では、起床直後が、夕食直前及び就寝直前のそれぞれよりも高かったが、登園直後及び昼食直前では有意な差は認められなかった。したがって、3 Mets以上の身体活動は、起床直後のコルチゾール分泌速度を著しく高め、概日リズムの形成に影響を与えている可能性が示唆された。
|