研究課題/領域番号 |
26870106
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
縣 拓充 千葉大学, 教育学部, 特任助教 (90723057)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 創造性 / アート / 転移 / 鑑賞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①アートへの認識や態度のバリエーション、あるいはアートを通じた学びを測定・評価するための方法論を構築すること、②「アート」を通じた学びの効果を「日常への転移」という観点から実証的に捉えること、③アートの体験を日常へとつなげるための要因を同定し、その支援のための理論的・実践的な知見を構築すること、の3点であった。その中で2年目前半は、前年度から引き続いて人々のアートに対する認識や体験について調査していくことに加え、それらのデータを分析し、質問紙尺度を作成することを予定としていた。また後半には、アートの鑑賞体験の仕方とそこに影響を与える要因について調べる実験を行うことも視野に入れていた。 前半の調査に関しては、データ収集・分析とも予定通り進行し、その一部として、美術科教育学会に尺度作成に関わる論文を投稿・採択された。また合わせて、小・中学生のアートに対する興味やモチベーションの長期的な追跡を並行して行い、日本教育心理学会の総会等において学会発表を行った。 後半部の鑑賞体験に関わる研究に関しては、実験という検証の仕方ではなく、美術館における観察というかたちで研究を進めた。その理由は、これまでの調査やフィールドワークの結果から、鑑賞の視点や方法は作品ごとに大きく異なる様相をとり、日常へとつなげるような活動が起こりうる作品はそのごく一部であること、 また子ども・大人を問わず、多くの人にとって作品理解は極めて難しく、鑑賞体験の効果を長く持続させたり、そこから別の文脈への転移を生起させる上では、作品体験を丁寧に支援することが不可欠になること、などが示唆されたためである。したがって、作品をいくつかに絞りそこでの発話のバリエーションを実験的に検証することよりも、鑑賞の支援の仕方に関わる洞察を深めるための観察や調査を優先して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半部の尺度作成の部分は、質問紙データ分析を終えて論文を投稿し、無事採択された。また、作品体験の長期的な影響に関わる検証も進んでいる。その意味で、順調に研究が進展したと言える。 他方で後半部に関しては、一部計画が変更された部分があった。ただし、当初予定していた実験ではないものの、美術館現場での調査などからは意義ある結果が得られている。 これらを踏まえて、達成度は「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまでに収集した質問紙や会話データの分析を中心として行う。上述した通り、日常への転移の前に、深い作品理解や、長く記憶に残るような鑑賞体験の支援という観点から分析を進めたい。特に会話データに関しては、その内容の長期的な変化に注目して検討を進めていくことも予定している。 また別場面への転移という側面に関しては、当初から3年目での実施を予定していた、ワークショップやアートプロジェクトへの参加が、学習者の日常にどのように変化をもたらすのかを検証するための実践研究を行う。展示と比較しても参加者のより深い体験をデザインしやすいワークショップという形態の活動の効果から、日常への転移の支援の可能性を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
遠方での学会発表や調査が少なかったこと、また採択が決った論文の発行が遅れ、掲載料等が年度内に請求されなかったことなどが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費、謝金、その他の項目は基本的にはそのまま年度を繰り越して利用することを予定しているが、一部は消耗品代等に充てることも予定している。
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