-375Aとして刊行されたアッカド語楔形文字資料、『バビロン天文日誌』の粘土板断片BM45673の右側にもともと位置した断片としてBM 42803およびBM 42974という互いに接合する未発表断片があることを発見し、この接合した2つの断片に刻まれるアッカド語楔形文字テクストの翻字と、テクストの英訳、さらに既刊行の断片BM45673との間にある未発見部分に存在が推測されるテクストの翻字と英訳を公表した。 また未公刊の日誌粘土板断片BM 35183の解読結果を、模写、翻字、英訳によって公表する論文を学術雑誌に投稿し、掲載が決定した。この粘土板に記された日誌には、既刊行の日誌-144にもその活動が記される、セレウコス朝のバビロン支配期 (前305/304-141/140年) 末期のアッカド (バビロニア) の将軍 (軍司令官) アルダヤが言及される。またベール・ルームルなる人物も登場し、これはセレウコス朝からバビロンを奪ったアルシャク朝の下で、バビロンの主神マルドゥクの神殿エサギルの最高指導者を務めた者と同一人物のようである。報告者は論文に詳しい解説を付し、セレウコス朝支配期末期からアルシャク朝支配期初期のアッカド語楔形文字資料を利用して、この日誌の歴史学上の意義を明らかにした。 未発表の関連資料については、大英博物館所蔵の粘土板Rm 709の模写と翻字を発表し、この粘土板上に、前311/310年を元年とするセレウコス紀元の101年から107年までの数字がリストアップされていることを明らかにした。 特異な形態を示す日誌-99Cについては、バビロニアで作成された占星術文書や上部メソポタミアでシリア語で執筆されたバルダイサンの『諸国の法の書』に引用された占星術文書『バビロンのカルデア人の書』などの内容と比較して、何らかの占星術的な目的のために編纂された日誌であろうと結論付けた。
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