研究課題/領域番号 |
26870114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑原 知樹 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10533903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / LRRK2 / 細胞内輸送 / エンドソーム / リソソーム / 脳神経疾患 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病において複数のエンドソーム・リソソーム関連遺伝子の変異が報告されている。我々はその中でも代表的な遺伝子の産物であるLRRK2がRAB7L1やVPS35などの相互作用因子と協調してエンドソーム・リソソーム系細胞内輸送を調節することを見出していた。本研究において、RAB7L1-LRRK2経路の遺伝学的下流因子の候補としてリソソーム経路で働くアダプタータンパク質であるAP-3複合体を同定し、LRRK2とAP-3の両者がLRRK2のN末端側を介して結合すること、また免疫細胞化学的および生化学的解析から両者がともにリソソーム膜タンパク質の細胞内輸送を調節することを明らかにした。これらの結果は現在英文誌に投稿中である。また別のアプローチから、LRRK2がリソソーム障害時にその局在を変化させ、リソソームの形態維持に働くこと、またLRRK2の局在変化にオートファジーと関連した新規分子経路が関与することを見出した。これらの結果は、LRRK2ノックアウトマウスの腎臓近位尿細管などにおいて認められるリソソームの肥大化を説明できる可能性がある。 一方、パーキンソン病脳内における特徴的な病理変化であるαシヌクレインの凝集・伝播をin vitroおよびin vivoで評価する実験系を初年度までに確立した。この系を用いて上記分子群を含めたエンドソーム・リソソーム経路遺伝子の関与について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAB7L1-LRRK2経路とAP-3複合体の遺伝学的および機能的関連について明らかにし、英文誌への投稿を果たした。またLRRK2のリソソーム形態維持における役割を明らかにし、さらに新規経路の関与を見出した。αシヌクレイン凝集・伝播の評価系についても計画通り初年度までに確立した。
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今後の研究の推進方策 |
LRRK2がリソソームの機能や形態を調節する分子メカニズムとして、RAB7L1-AP-3経路を介したリソソーム膜蛋白質の輸送調節が関与する可能性と、別のアプローチから見出した新規分子経路によって調節されるLRRK2自体の局在変化が関与する可能性が考えられた。今後はこれらのメカニズムをさらに追求するとともに、リソソーム肥大化が顕著に認められるLRRK2ノックアウトマウスを用いた検討を追加し、in vivoでの関与を明らかにする。またLRRK2とその周辺因子がαシヌクレインの凝集・蓄積に与える影響についてもin vitro、in vivoの両面から解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は主に培養細胞を用いて細胞内輸送に関する免疫細胞化学的および生化学的な解析を集中的に行ったが、これらの研究の遂行に必要な細胞、培地、抗体やその他の消耗品の多くについては研究開始時までに準備可能であった。また、本研究において最も費用がかかるマウスを用いたin vivoの実験については次年度に重点的に行うこととし、またヒト線維芽細胞の購入および解析を次年度に行う予定にしていたため、これらに必要な費用を次年度に多く残すこととした。さらに初年度においてLRRK2の局在変化に関する検討が進展し、そのメカニズムの研究のため次年度にプロテオミクス解析を行う必要があると判断したため、その費用を次年度に繰り越して使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、LRRK2やAP-3の遺伝子改変マウスの購入・維持および解析を集中的に行うとともに、αシヌクレインの蓄積・伝播のin vivoにおける解析のためにもマウスを用いた実験を施行する。また、パーキンソン病患者由来の線維芽細胞の購入および解析を次年度からスタートさせる予定である。加えてLRRK2局在変化時のプロテオミクス解析を行い、その結果に合わせて新たに抗体や試薬を購入して細胞生物学的解析に供する。
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