研究実績の概要 |
パーキンソン病の原因遺伝子または危険因子として複数のエンドソーム・リソソーム関連遺伝子が報告されている。我々はその中の3つ、LRRK2, RAB7L1, VPS35が協調してエンドソーム・リソソーム系細胞内輸送を調節することを見出していた。本研究において、線虫・マウスにおけるRAB7L1-LRRK2経路の遺伝学的下流因子の候補としてリソソームへの細胞内輸送に重要なアダプタータンパク質AP-3複合体を同定し、LRRK2とAP-3がLRRK2のN末端側を介して結合すること、免疫細胞科学的および生化学的解析から両者がともにリソソーム膜タンパク質のエンドソーム輸送を調節することを明らかにした。一方、別のアプローチから、LRRK2がリソソーム障害時に肥大化したリソソーム膜上に集積し、リソソームの形態維持に働くことを見出した。さらにそのリソソーム膜への集積にもRAB7L1が関与することを見出した。これらの結果は、LRRK2やRAB7L1のノックアウトマウスにおいて認められるリソソームの肥大化を説明できると考えられる。 一方、パーキンソン病脳内において特異的に蓄積するαシヌクレインタンパク質の凝集・伝播をin vitro, in vivoで評価する実験系を確立した。また、一部のリソソーム障害剤処理によりαシヌクレインの不溶化が亢進することをin vitroの系で確認した。マウス脳内におけるin vivoでの効果は検証中であるが、本研究を通じてパーキンソン病発症におけるリソソーム障害の関与を示唆する知見が複数のアプローチにより得られた。
|