研究課題/領域番号 |
26870118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坪井 誠也 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20721963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イヌゲノム / 神経軸索ジストロフィー / 神経疾患 / 遺伝子病 |
研究実績の概要 |
全エキソーム解析法により、パピヨン犬に散発的に発生する神経軸索ジストロフィー(NAD)の原因遺伝子を特定した。本研究では、(A)多症例のパピヨン犬において変異の大規模スクリーニング検査を行い、キャリア犬を摘発すると同時に、(B)同変異が疾患の病態発生に与える影響について調査する。平成27年度の研究成果を以下に示す。 平成26年度に引き続き、平成27年度では未発症パピヨン犬のDNAサンプルを収集し、同定された変異のジェノタイピングを行った。ジェノタイピング検査では、収集した未発症の個体はいずれも野性型のアリルを有することが分かり、キャリア個体を摘発することはできなかった。また、NADはパピヨン・チワワ交雑種においても発生が見られたことから、チワワ犬についてもDNAサンプルを収集し同様の検索を行ったが、キャリアを摘発することはできなかった。 また、平成26年度にはNAD症例犬の脳組織においてオートファジー関連分子であるMAP LC3(microtubule-associated- protein-light-chain-3)タンパク質の局在異常を確認したが、平成27年度はより詳細な病理解析について検討した。結果、オートファゴソーム誘導に関与するBeclin1、初期のオートファゴソームに発現するATG5、ATG16LがNAD症例のスフェロイドに発現していることが確認され、病変部には発達段階のオートファゴソームが蓄積していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(A)多症例における変異のスクリーニングについては前年度同様多くのサンプル収集を行うことができ、順調に進展している。しかし、依然キャリア個体を摘発できておらず、NADモデル犬の作出への道のりはまだ遠い。また(B) 変異が疾患の病態発生に与える影響については、マイトファジーについて検討する予定であったが、検討に必要な抗体が見つからず進展していない。
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今後の研究の推進方策 |
(A)多症例における変異のスクリーニングについては、上述の通りパピヨン犬において変異の浸透度が非常に低いことが示唆され、まだキャリア個体を摘発できていない。次年度も引き続きゲノムサンプルを収集するが、パピヨン犬を繁殖しているブリーダーとも交渉し、積極的に情報を収集・解析する予定である。 (B)については、①原因遺伝子がミトコンドリアで機能していること、②NAD症例においてオートファジー関連タンパク質の分布異常が確認されたことを踏まえ、マイトファジー関連タンパク質について精査する。
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