研究課題
本研究では生化学、構造生物学、逆ケミカルバイオロジー及び分子生物学の手法を用いて以下の研究を行う。①阻害剤及びRNAiによるフマル酸呼吸依存的なピリミジン生合成経路の分子機構。フマル酸呼吸の最終産物であるコハク酸の高感度な新規定量方法を開発し、各種呼吸鎖阻害剤存在下におけるコハク酸の産生量を測定した。正常培養条件下では複合体IIの阻害剤でコハク酸の量が上昇した。逆に、低酸素・低栄養条件下では複合体II、複合体I及びDHODH阻害剤によりコハク酸量が減少した。一方、複合体III阻害剤ではコハク酸の変動は見られなかった。これは正常培養では複合体IIがコハク酸脱水素酵素として機能し、低栄養・低酸素条件下ではフマル酸還元酵素として機能する事によってNADHの再酸化とピリミジン生合成を可能にすると言う事が判った。②AF、LC、FL誘導体の構造活性相関の解析及び絞り込み。当研究室が保有するAF誘導体約220種類を用いてヒトDHODHに対しスクリーニングを行い、IC50が10nM以下で阻害する化合物を最終的に5種類見出した。さらに、新規なLC誘導体を3種類設計し、IC50が4.66 nMの誘導体を1種類見出した。③ヒトDHODHとAF、LC 及びFL 誘導体との複合体構造。②で見出した新規ヒトDHODH阻害剤のAF・LA誘導体との複合体結晶構造を得た。④ヒトDHODH阻害剤の、正常及び微小環境条件下での癌細胞増殖阻害効果。②で見出した強力な新規ヒトDHODH阻害剤を最終的に6種類を用いて低酸素・低栄養条件下における癌細胞の増殖をIC50が1μM以下で特異的に阻害する事が判った。⑤微小環境系の癌マウスモデルを用いたヒトDHODH阻害剤の効果。27年度で計画していたin vivo実験を行うためのAF、FL及びLC誘導体の絞り込みを行ったが、目的の合成量に達しなかったため行う事は出来なかった。
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