本研究は,甲虫目や革翅目を初めとする折りたたみ型の後翅を有する昆虫の翅の展開・収納行動をハイスピードカメラ,3次元計測技術を用いて詳細に観察し,折紙の幾何学を用いて翅のデザインを弾性力学的観点から説明する3次元折りたたみモデルを開発することで,革新的な展開構造を創成することを目的とする. 平成28年度には,これまでに確立したマイクロCT装置を用いた昆虫の外骨格の三次元計測手法を応用し,得られた立体データから有限要素モデルを作成して数値シミュレーションで機械的特性を解析する手法を研究した.これらのテクニックを用いて,テントウムシの翅脈の曲げ剛性,座屈強度解析を行い,特徴的なテープスプリング型のフレームによって,翅の強度・剛性とコンパクトな折り畳みを実現していることが解明された.前年度までの成果に加え,これらの解析結果を基に,テントウムシの後翅の折り畳みに関する論文執筆を行った.これまで確立した昆虫学者らのネットワークを駆使し,新たにコブハサミムシとナガヒラタムシに関する共同研究をスタートさせ,ハイスピードカメラによる観察を行った.コブハサミムシに関しては,先行研究調査によって,離陸シーンを撮影するための実験装置を考案し,翅の展開動作の観察を行った他,マイクロCT装置による収納状態の翅の観察を行った.ナガヒラタムシは,翅をコイル型に巻き取って収納する特徴的な折り畳みをしており,ハイスピードカメラによって展開シーンの撮影を行った.本年度が最終年度に当たるため,生物模倣工学に関する英文書籍の執筆,エアロ・アクアバイオメカニズム学会での招待講演など研究成果発表も積極的に行った.
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