研究課題/領域番号 |
26870138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸石 七生 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (20622765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / インド / デカン地方 / 農村構造 / 農本主義的社会主義的分業 / 職人 |
研究実績の概要 |
2014年度は、農本主義的社会構造について、インドとの比較研究を積極的に行った。具体的には、計2回のワークショップ(外国人研究者の参加する国際ワークショップ含む)を行い、村落共同体内の農本主義的社会的分業と農村計画についてそれぞれのワークショップで報告を行った。また、多くのインド研究者と積極的に交流を行い、日印における百姓株式制度や農村計画について議論し、多くの成果を得た。農本主義的社会的分業に基づく農村構造については、「60人の農民と12人の(バルテー)職人」というインドの慣用句が日印両国の中近世について農村構造のモデルとして適用できること、農村計画については「ムラ(屋敷地)・ノラ(耕地)・ヤマ(林野)」という日本民俗学のモデルが日印両国で適用できるという結果を得た。 さらに、農村構造研究の一環として、中近世の日印の農村社会のメンバーシップの分割方法について分析した。その成果を、「コモンズ研究会」で報告し、好評を得た。 飯能市(上名栗村古組)については、非農業身分の村落居住者に関する近世史料が多く残存していることが判明し、収集した史料の一部を分析して結果を前述の論文「日印の伝統農村の共済機能―地域社会における社会的分業の比較史的研究―」(『共済総合研究』70号、2015年3月、41-73頁)で発表した。上記の二地域に加え、佐倉市でも資料調査と聞取りを行い、武士身分出身者と百姓身分出身者の混住する農業集落について、その近世近代以降期の構造を分析し、結果を「新興武家地と近代―飯野町熊谷家文書の分析を中心に―」(『佐倉市史研究』28、2015年3月、37-56号)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究のサーベイと他分野専門の研究者との協力が捗ったため、予定を変更して2年目以降の計画を先に実行することになった。具体的には、インドとの比較、ミクロ経済学者を中心とした他分野の研究者との交流である。 百姓株式のインドとの比較研究のために、計2回のワークショップを行い、村落共同体内の農本主義的社会的分業と百姓株式制度についてそれぞれのワークショップで報告を行った。また、多くのインド研究者と積極的に交流を行った。 ミクロ経済学者とは、コモンズ研究会で交流を行った。コモンズ研究会ではミクロ経済学者以外のコモンズ専門家からも、当研究に関わる多くの有意義なアドバイスを得た。 秦野市については横野地区の資料の一部の分析に止まり、成果発表には至らなかった。一年目の主な課題であった蓑毛地区のフィールドワーク調査や資料収集については、一部関係者に研究計画について説明し、協力を依頼するにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
秦野市については、横野地区の資料分析を進める傍ら、蓑毛を始めとする他地区の資料収集、関係者への聞取りを進める。特に、蓑毛集落や上大槻集落における史料の残存状況の調査を進める。飯能市については、2014年度の成果を踏まえ、非農業身分居住者に関する資料を中心に収集と分析を続ける。佐倉市については、2014年度の成果を踏まえ、武士身分出身者についてさらに史料を収集し、居住者データベースを作成し、その移動について具体的に明らかにする。 上記の2つのフィールドに加え、石川県能美市牛島地区で資料調査を行う。目的は、水害常襲地帯の百姓株式に附随する権利について明らかにすることである。 インド史との比較については、村落共同体内の社会的分業の比較研究に続き、「60人の農民と12種類のバルテー職人」のモデルをさらに拡張し、農民身分の持つ社会的意義を両国の歴史的観点から追求したい。関連して、ケ/ケガレの概念に関する比較研究も引き続き行う予定である。 秦野市の調査の結果は、6月の比較家族史学会のシンポジウムで、穀物生産者の組織である百姓の村という観点から、生産組織・相互扶助組織・である五人組が百姓株式制度の在り方に大きな影響を及ぼしていたことを報告する。また、牛島地区の調査の結果は、10月に行われる第三回「East Asian Environmental History(東アジア環境史学会)」で、百姓株制度が水害常襲地帯では土地利用のあり方を規定していたことを英語で報告する。報告は査読付きである。
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次年度使用額が生じた理由 |
秦野市におけるフィールドワーク及び史料収集ができず、研究協力者への謝金及び旅費が支出できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
秦野市におけるフィールドワーク及び史料収集のため、研究協力者への謝金及び旅費を支出する。
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