研究課題/領域番号 |
26870138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸石 七生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (20622765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農本主義 / ケガレ / 身分制度 / 非農業部門 / インド |
研究実績の概要 |
平成28年度は前年に引き続き農本主義的な社会構造について、国内外の資料を収集した。神奈川県秦野市蓑毛地区、石川県能美市牛島地区については、資料を収集中である。特に、日本とインドの農村社会に在住する非農業身分について、その背景となる職業や産業についての知識と理解を深めるために、寺社や牛馬に関する資料を中心に収集した。 さらに、農本主義バイアスと身分制度の関係を解明するために、ケガレに関する先行研究のレビューを行い、インド研究者とも農本主義的なケガレ観念について活発に意見交換を行った。その結果、牛馬の屠殺規制及び斃牛馬の処理についての政策や地域社会における慣行について、日本とインドでは大きな共通点があることが判明した。 日本とインドの牛馬に関する法規制や地域社会における慣習を改めてアジア農業史の文脈に位置づけた時、それは特異性を示すものでは決してなく、むしろ穀物生産が畜産を規定するというアジア農業の特徴を典型的に表すものであることが明らかになった。両国における身分制が職能集団結合が農本主義的社会的分業の表れであり、共通点が多いことは本研究で既に解明されたことであったが、その背景には両国の農業の穀物生産中心主義的な在り方だけではなく、畜産業においても大きな共通点があることが両国の農業を研究することにより改めて明確になったと言えよう。 上記の成果は「日本の伝統農村における社会福祉制度」(『共済総合研究』74号所収)及び、「近世日印農村社会比較研究試論」(『マハーラーシュトラ』13号、近刊)で発表済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神奈川県秦野市蓑毛地区、石川県能美市牛島地区についての資料収集が遅れているため、整理と分析が進展していない。 一方、日本近世社会全体における農本主義についての資料並びに文献の収集は進んでおり、インドをはじめとする他国の研究者とも研究交流を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
蓑毛地区および牛島地区の資料収集と整理、及び分析にすることで、近世後期の農村における百姓身分と寺社の関係の解明を通じ、修験道と農本主義的なケガレ概念が身分制度及び農村社会の秩序形成に果たした役割をモデル化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、神奈川県秦野市蓑毛地区における近世非農業身分に関する史料所有者と交渉中であるが、交渉が計画より遅れており、同地区について、史料調査及び史料に基づいた聞き取り調査が進展していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
神奈川県秦野市蓑毛地区における近世非農業身分に関する史料所有者と交渉をすすめ、同地区について、史料調査及び史料に基づいた聞き取り調査を行う。その際、資料整理と聞き取りの補助者が必要なため、人件費・旅費を支出する。
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