研究課題
心血管疾患の発症には、高血圧によって引き起こされる動脈リモデリングの進展が深く関与することが広く知られている。また、血圧が上昇し始める高血圧前症の段階から治療を開始することの有用性が提唱されており、動脈リモデリングの進展に対して早期から介入することが肝要と考えられている。ところが動脈リモデリング進展の分子機構、特に高血圧早期に動脈リモデリングのトリガーとして働く分子細胞機序は十分に明らかになっていない。我々は高血圧によって引き起こされる初期の動脈リモデリングの特徴として認められる血管平滑筋細胞の増殖に注目し、高血圧性動脈リモデリングの誘導メカニズムの解明に取り組んだ。動脈リモデリングを引き起こす高血圧モデルとして、AngiotensinⅡ (AngⅡ)持続投与マウスを用いた。AngⅡ投与1週間後という高血圧の初期段階の腹部大動脈において血管平滑筋細胞の増殖と同時にWntシグナルの活性化が認められ、血管平滑筋細胞の増殖にはWnt/beta-cateninシグナルが重要な役割を果たすことを明らかにした。また、高血圧に伴って大動脈外膜側に集族するマクロファージが重要な役割を果たしていること、中でもCD206陽性のM2様マクロファージが補体分子C1qを介して血管平滑筋増殖およびWnt/beta-cateninシグナルの活性化を引き起こすことを明らかにした。そして、補体分子C1qによるWnt/beta-cateninシグナル活性化の阻害は、高血圧による長期的な動脈リモデリングの進展を抑制することを確認した。本研究により、C1q‐Wnt/beta-cateninシグナル経路を阻害することは、動脈リモデリングをターゲットとした新たな高血圧治療として有用である可能性が示唆された。
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Nature Communications
巻: 6:6241 ページ: 1-12
10.1038/ncomms7241