研究課題/領域番号 |
26870142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹本 周平 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90724724)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 材質腐朽病 / モデル実験系 / ハプロイド菌株 / 病原力の遺伝 |
研究実績の概要 |
《交配親候補となるスエヒロタケハプロイド菌株を選抜し、病原力の特性を評価した》 まず、前年度とは異なるスエヒロタケ菌株を用いて接種実験をおこなった。前年度までに確立した手法どおり、変色長を指標として病原力を評価し、候補菌株のなかから病原力の強いものと弱いものを選抜した。これまでに得られている結果と同様に、枝直径、枝内の接種位置、菌株の種類が変色長に影響を及ぼしていることが確認された。菌株以外の要因が変色長及ぼす影響を統計的に除去したうえで、これまでに供試した菌株すべてのなかから最も病原力の強い菌株群および弱い菌株群を選定した。それらは二核の菌株であるため、今後の交配実験にただちに供試することはできない。そこで、それら菌株の分離原である子実体から改めて担子胞子を取得し、培地上で独立に発芽させ、単核のハプロイド菌株を取得した。子実体から担子胞子が取得できなかった菌株については、胆汁末含有培地による脱二核化を経てハプロイド菌株を取得した。これらのハプロイド菌株およびそれらの元となった親菌株の病原力を上述と同様の方法で評価した。その結果これまでと同様に、枝直径、枝内の接種位置が変色長に影響を及ぼしていることが確認されたほか、変色長の大小は親菌株の病原力に基づくグループ分けと全体的に整合した。つまり、強病原力のグループから得られたハプロイド菌株群の病原力が、弱病原力のグループから得られた菌株群より強かった。このことは病原力に関連する遺伝的な因子があることを示唆している。しかしながら同時に、この実験では変色長に大きなばらつきが認められたため、病原力の評価の正確性を担保するためには再実験の必要があると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験材料として優れた特性を持つポプラ品種の現存本数が少なく、昨年度後半から増殖をすすめているものの、まだ十分ではない。限られた材料を実験に割り振らなければならず、研究の進行が遅れている。以上のような問題点はあるものの、交配親候補となるスエヒロタケハプロイド菌株が選抜でき、病原力に関連する遺伝的な因子があることが実験的にも裏付けられたので、引き続き本研究課題を遂行することには支障がない。
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今後の研究の推進方策 |
苗畑におけるポプラ標準品種の植栽を引き続き拡充していく。また、得られたハプロイド菌株の病原力をポプラ生立木において再確認し、最も病原力の強いものと弱いものとを交配後、子実体を形成させて担子胞子を得、培地上で独立に発芽させ50株程度のハプロタイプ菌株のセット(H1菌株群)を取得する。すでに確立している実験系を用いて、これらH1菌株群の病原性を詳細に評価する。RAD sequencing法を用いて、ゲノム全体がカバーできる高密度のDNA多型マーカーを開発し、交配親菌株およびH1菌株群の遺伝子型を特定する得られた多型情報をもとにQTL解析をおこない、病原力関連遺伝子領域を網羅的に同定する。
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