研究課題
先行研究では、オメガ3脂肪酸が子宮内膜症マウスモデルにおいて病変抑制効果を持ち、それは12/15-LOX系代謝産物に起因するIL-6産生抑制といった、抗炎症作用によってもたらされる可能性が示されていた。このためまずin vitroで、オメガ3脂肪酸の子宮内膜症抑制効果を検証することとした。子宮内膜症性卵巣嚢胞間質細胞(Endometriotic stromal cells: ESC)にオメガ3脂肪酸であるEPAとDHAを添加して炎症反応を検証したところ、オメガ3脂肪酸はESCのIL-8産生を上昇させた。またESCの炎症性サイトカインに対する反応性を、オメガ3脂肪酸処理下にTNF-αおよびLPSで刺激して検証したところ、いずれもIL-8産生は抑制されなかった。次に、腹腔内マクロファージに注目し、培養腹腔内マクロファージを、オメガ3脂肪酸処理下にLPSで刺激して検証したところ、マクロファージからのTNF-α産生は抑制されなかった。そこで次に、マクロファージのインフラマソームの活性化に注目した。近年、オメガ3脂肪酸は、インフラマソームの活性を抑制することで、マクロファージからのIL-1β産生を抑制することが報告されている。オメガ3脂肪酸処理下では、子宮内膜症患者の腹腔内マクロファージからのニゲリシン刺激(インフラマソーム活性化の試薬)に対するIL-1β産生が抑制された。今後は、この経路の検証を行うことで、より詳細な抗炎症作用機序が明らかになる可能性があると考える。またオメガ3脂肪酸とは異なるが、抗炎症作用をもつポリフェノールの一種であるレスベラトロール(RVT)についても並行して検討を行い、RVTによりESCのTNF-α存在下でのIL-8産生は抑制され、ESCのアポトーシス感受性も向上することが示された。
4: 遅れている
In vivoでの現象の詳細な機序を解明するために、今年度はin vitroでの検証を先行させたため、in vivoモデルでの検証については遅れていると言える。しかしながら今年度の検証から、オメガ3脂肪酸は、ESCやマクロファージにおいて、通常の炎症経路(炎症性サイトカインやパソジェンによる炎症)を介する効果ではなく、マクロファージにおけるインフラマソームの活性化を抑え、IL-1β産生を抑制することによって抗炎症作用をもたらす可能性が示された。腹腔内マクロファージのインフラマソーム抑制に寄与する代謝産物経路の解明が、より特異的な子宮内膜症治療薬の開発につながると考えている。
今後は、in vitroの検証から見出された経路(インフラマソーム)を中心に、メタボローム解析を用いることで、この経路に重要な役割を担うオメガ3脂肪酸代謝産物に注目していく。またin vivoにおいては、オメガ3脂肪酸の12/15-LOX系代謝産物の投与実験を行い、子宮内膜症に抑制効果を示す代謝産物の検証を行う。さらにオメガ3脂肪酸とは異なるものの、RVTをはじめとする抗炎症・抗腫瘍効果を有する生理活性物質における、子宮内膜症抑制効果および治療薬としての可能性について並行して検討を行うことも、意義のあることと考えている。
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